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<荒井幸博のシネマつれづれ> オー!ファーザー

2014年5月23日
4人の父親が快刀乱麻
 仙台市在住の人気ミステリー作家、伊坂幸太郎の同名小説の映画化。
<荒井幸博のシネマつれづれ> オー!ファーザー

 由紀夫(岡田将生)はどこにでもいる高校生だが、生まれた時から4人の父親と同居している。4人は大学教授(佐野史郎)、ギャンブラー(河原雅彦)、体育教師(宮川大輔)、元ホスト(村上淳)という顔ぶれ。
 彼らは由紀夫の母親を熱愛している。由紀夫にも愛情を持って接し、それぞれ自分こそ由紀夫の父親だと主張する。真相は不明だが、それぞれの特技をいかして家事を分担し、息子1人に母親1人、父親4人という異様な家族構成ながらも温かな暮らしを送っていた。
 そんな由紀夫がカジノでカバンのすり替え事件を目撃し、俄然(がせん)、キナ臭い展開に。不可解な心中事件、街のボス(柄本明)がハメられた詐欺事件、同級生の不登校…。
 そして街のボスから脅かされるに至った由紀夫は意を決して行動を起こすのだが、何者かに拉致(らち)監禁されてしまう。4人の父親たちは由紀夫を救い出せるのか――。

 4人から愛される母親はどれほど魅力的な女性かと想像するが、残念ながら姿は現わさない。配役するなら小泉今日子、鈴木京香、中谷美紀あたりか?やはり違う。
 また本当の父親を特定するなら大沢樹生のようにDNA鑑定すれば事足りるはずだが、彼らはそういうことはしたくないのだろう。いがみ合うことなく互いを尊重している関係が微笑ましい。
 伊坂作品の映画化は「陽気なギャングが地球を回す」「アヒルと鴨のコインロッカー」「ゴールデンスランバー」「重力ピエロ」など10作品に及ぶ。岡田将生は24歳だが高校生役に違和感はなく、「アヒルと~」「重力ピエロ」に続く3作目の伊坂作品。
 シチュエーション・クライム・コメディと呼びたくなる伊坂ワールドを脚色・演出した藤井道人監督は弱冠28歳。また一人、楽しみな若手監督が出てきた。
 山形市出身の女優、橋本マナミさんが出演していることも添えておく。


<荒井幸博のシネマつれづれ> オー!ファーザー
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。