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<荒井幸博のシネマつれづれ> 白ゆき姫殺人事件

2014年4月11日
ネットの噂話の恐怖

 中村義洋監督「白ゆき姫殺人事件」は「告白」「贖罪(しょくざい)」で知られる作家・湊かなえの同名小説を映画化したサスペンスドラマ。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 白ゆき姫殺人事件

 長野県の山中で化粧品メーカーの美人OL・三木典子の惨殺死体が発見される。典子と同期の城野美姫が怪しいという情報をつかんだテレビディレクター・赤星雄治は、翌日のワイドショーで実名は伏せながらも美姫の犯行が有力と報道する。だが、その放送をきっかけにネット上では実名が出回ってしまう。
 赤星が取材を進めれば、地味な彼女が被害者に恋人を奪われていたことが判明、恨みによる殺人であることが濃厚。彼女の郷里を訪ねても「小学生のころは呪いの儀式をやっていた」等々、彼女の犯行を裏付けるものばかり。しかも彼女は事件の夜から失踪していた。報道は過熱し、ネットは炎上する――。
 美姫に井上真央、被害者・典子にモデル出身の菜々緒と2人の対照が役柄にピタリ。テレビディレクターの綾野剛、情報をリークするOLの蓮佛美沙子もそれぞれ好演。
 特に蓮佛は初主演した大林宣彦監督「転校生」をやまコミで紹介した2007年8月10日号で「これからが楽しみな女優」と注目していただけに、ひそかに自画自賛してほくそ笑んでいる。

 この作品をみて20年前に起きた松本サリン事件を思い出した。被害者でありながら事件への関与が疑われ、警察の捜査を受けたばかりか、多くのメディアから犯人として扱われたのが河野義行さんだった。
 その後、事件はオウム真理教の犯行であることが判明し、河野さんへの疑いは完全に晴れたが、警察のずさんな見込み捜査とそれに追従したマスコミ報道に憤りと危うさを覚えたものだった。
 まして現在は20年前には存在しなかったブログ、ツイッター、SNSが氾濫する時代。ネット人口が急増していることを考えれば、その危うさは当時とはケタ違いに増大していることをこの作品は教えてくれる。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 白ゆき姫殺人事件
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。