徹底して山形に密着したフリーペーパー

<荒井幸博のシネマつれづれ> 小さいおうち

2014年2月28日
山形にも嬉しい黒木受賞

 山田洋次監督「小さいおうち」に出演した黒木華が第64回ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞に当たる銀熊賞に輝いた。黒木が演じたのは昭和10年、雪深い米沢市から女中奉公のため上京した布宮タキ役。しかも黒木は東北芸術工科大学の姉妹校・京都造形芸術大学の卒業生だから、山形にとっては二重に嬉しい受賞だ。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 小さいおうち

 タキは郊外に建つモダンな赤い三角屋根の平井家で働くようになる。平井家は会社重役の雅樹と美しい妻・時子、息子が穏やかに暮らしていた。だがそんな暮らしは夫の部下・板倉という青年の出現で揺らいでいく。時子が板倉にどんどん惹かれていくのだった。平井家の安寧と幸せを願うタキにとっては見過ごせないことだった――。 
 作品としては映像が美しく、時代考証も丹念に描かれているが、キャスティングにいささか疑問を感じた。黒木と片岡孝太郎以外は倍賞千恵子、吉岡秀隆、笹野高史、小林稔侍など過去の山田監督作品の常連たち。
 まして前作「東京家族」の妻夫木聡、橋爪功、吉行和子、林家正蔵、中嶋朋子らも揃って出演しており、新鮮味に欠けるとともに適材適所の配役とは言い難い。

 そんな中でも黒木の演技は光った。間もなく24歳になる黒木は決して美人ではないが、白い割烹着姿の純朴なタキにピッタリ。主人を想い、心を痛めながらも最善の方向に導こうとする若い娘を切なく表現していた。
 日本人の銀熊賞は左幸子、田中絹代、寺島しのぶに次いで4人目で、このうち最年少の受賞。最初の左幸子が「にっぽん昆虫記」で演じたのは山形県出身の松木とめ役で、川西町や飯豊町で撮影されたというのもいま思えば感慨深い。
 ちなみに黒木は3月7日公開「銀の匙」ではヒロインのライバルで女王様気取りの鼻持ちならない高校生を演じているので、こちらにも注目。
 姉妹校の芸工大からも黒木に続き世界に羽ばたく人材が出現することを楽しみに待ちたい。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 小さいおうち
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。