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<荒井幸博のシネマつれづれ> 東京原発

2014年1月24日
今こそ見返したい作品

 来月9日に投開票が行われる東京都知事選挙の争点が「脱原発」になりそうだとか。思わず10年前公開の映画「東京原発」を思い出した。

 <荒井幸博のシネマつれづれ> 東京原発
 「東京に原発を誘致する!」。都民の圧倒的支持を得ているカリスマ知事が突如宣言、緊急招集された幹部職員は一瞬凍りつく。知事は都の財政再建の切り札になるとして原発誘致のメリットを諄々(じゅんじゅん)と説く。
 しかも立地場所は都庁に隣接する新宿中央公園。そこから知事に追従する推進派と反対派の意見のぶつかり合いが始まる。原子力に関しては素人の幹部職員らによるやり取りなので心もとない限りだが、途中から専門家も加わって議論はが然白熱してくる。
 そこには知事の深謀遠慮もあったのだが、そんな折も折、極秘裏に大量のプルトニウム燃料を積んだトラックがお台場から福井原発に向かう途中、爆弾マニアの少年にジャックされるという危機が発生する――。

 本作の監督は、オリジナル脚本も手がけた上山市出身の山川元監督。都知事に役所広司、副知事に段田安則、幹部職員に平田満、岸部一徳、吉田日出子、田山涼成ら。他に益岡徹、徳井優、塩見三省、綾田俊樹ら実力派俳優が脇を固める。
 彼らが噛み砕いた言葉で国の原子力政策から廃棄物処理の問題、代替エネルギーの問題などを喧々囂々(けんけんごうごう)と議論する場面には深くうなずき、そして笑ってしまう。テーマは重いが、見事なエンタテインメント映画に昇華されている。
 公開は2004年3月。作品中、プルトニウムジャックによる危機を国より先につかんだ米軍から都庁に連絡が来るシーンがある。当時はブラックユーモアとしか思えなかったが、7年後、東日本大震災に伴う福島の原発事故でこのことが現実となり、ゾッとしたものだった。
 2年前、役所広司さんにインタビューした時に「今こそこの映画を広く観て欲しい。観せるべきです」と熱く語っていたのが印象に残る。

 <荒井幸博のシネマつれづれ> 東京原発
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。