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<荒井幸博のシネマつれづれ> 永遠の0(ゼロ)

2013年12月27日
家族愛と戦争の悲惨さ
 2014年正月映画の掉尾(とうび)を飾る「永遠の0」が公開された。

 司法試験に落ち続け、人生の目標を見失いかけている佐伯健太郎。祖母・松乃の葬儀後、母親から自分と祖父・賢一郎とは血のつながりがなく、実の祖父は太平洋戦争で特攻により戦死した宮部久蔵という人物であることを知らされる。
 久蔵のことを知ろうと当時の戦友たちを訪ねるが、久蔵に対する彼らの印象はすこぶる悪い。「臆病者」「恥さらし」「卑怯者」――。嫌気がさして意欲を失くしかけた矢先、末期がんで余命幾ばくもない井崎から、久蔵は優秀なゼロ戦操縦士でありながら愛する妻子のために「自分は必ず生きて帰る」と思い定め、部下にも「死ぬな」「生きろ」と説いていたと聞かされる。
 そんな祖父がなぜ特攻に志願して死んでいったのか。戦友たちの証言により、祖父の人間性や真意が浮かび上がるだけでなく、驚きの事実にたどり着くのだった。
 回想場面での久蔵を岡田准一、松乃を井上真央が好演。戦友は染谷将太、濱田岳、三浦貴大、新井浩文など若手実力派。健太郎は三浦春馬。証言するかつての戦友は平幹二朗、橋爪功、山本學、田中泯ら豪華俳優陣。
 原作は百田尚樹の同名ベストセラー小説。演出は「三丁目の夕日」シリーズや、浜田広介原作「泣いた赤おに」をモチーフにしたアニメ映画「friends もののけ島のナキ」の山崎貴監督。山崎監督が得意とするVFXを駆使した戦闘シーンは、実際はかくやと思わせるほどの迫力とリアリティを感じさせ、戦争の悲惨さや痛みが伝わってくる。

 国のために死ぬことが当然とされる中で腰抜けのそしりを受けながらも「家族のために生きて帰る」という信念を貫こうとした久蔵の勇敢さ、そして久蔵を信じて待っていた松乃との夫婦愛に心を打たれると同時に、その家族の幸せを踏みにじる戦争への嫌悪感を一層深めたのだった。
 松乃の2番目の夫・賢一郎を演じたのは5月に亡くなった夏八木勲さん。「生き残った者の責任として真実を伝え語り継ごう」という賢一郎の言葉がそのまま夏八木さんの遺言に思えた。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 永遠の0(ゼロ)
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。