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<荒井幸博のシネマつれづれ> 利休にたずねよ

2013年11月22日
海老蔵が亡父と共演

 千利休の生涯を描いて直木賞を受賞した山本兼一の同名小説を、市川海老蔵の主演で田中光敏監督が映画化した「利休にたずねよ」が12月7日から公開される。
 この作品は「モントリオール世界映画祭」で最優秀芸術貢献賞を受賞したほか、初代長次郎作の黒楽茶碗(くろらくちゃわん)など時価数億円といわれる本物の茶器を使用していることでも話題を呼んでいる。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 利休にたずねよ
 豊臣秀吉から切腹を命じられた利休は、聚楽第(じゅらくだい)にしつらえた茶室で最期の日を迎えた。まさに腹に刃を突きたてようとしたその時、妻の宗恩(中谷美紀)は「自分以外に想い女(びと)がいたのではないか?」と夫に抱いていた長年の疑念をぶつける。
 堺の豪商の放蕩(ほうとう)息子で色街(いろまち)に入り浸っていた利休には、生涯忘れることのできない女性との激烈な悲しい愛の思い出があったのだ。
 あれから――。茶の湯の道を極めようと10代のころから武野紹鴎(たけのじょうおう)(市川團十郎)に師事して邁進。やがて織田信長(伊勢谷友介)に取り立てられ、秀吉(大森南朋)のもとでは「茶頭」を務めるなど順風満帆に思えたが、次第に秀吉からは疎まれる身に。秀吉と利休の蜜月がなぜ崩壊していったかもテーマになっている。

 利休を演じた海老蔵は、若き日の放蕩時代と、茶の湯の道で昇り詰めようとする利休を見事に演じ分けていた。亡き父團十郎との共演場面にも心動かされる。原作者、監督とも「彼なくして成し得なかった」というのもうなずける。
 切腹しようとする夫に刃より鋭い質問を投げかける宗恩を演じた中谷の静謐(せいひつ)な美と強さを感じさせる演技も素晴らしい。「清須会議」では秀吉の妻のお寧(ね)を演じ、夫をもり立てるために酒宴で腰を振り振り踊る弾けぶりだったが、その演技の幅の広さに驚かされる。
 中谷はまた、来年のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」では黒田官兵衛の妻・光(てる)を演じる。秀吉の時代の傑物の妻役が続く中谷こそ傑物なのではと思ってしまう。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 利休にたずねよ
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。