<荒井幸博のシネマつれづれ> 華麗なるギャツビー
第一次大戦後、米国が未曾有の好景気に見舞われていた1920年代。夜ごと豪華なパーティーが繰り広げられている大富豪ジェイ・ギャツビーの大邸宅の隣に、作家志望のニック・キャラウェイが故郷の中西部から越してきた。

湾を隔てた対岸の高級住宅地には、ニックのいとこデイジーと、彼女の夫で女好きの大富豪トム・ブキャナンが住む豪邸がある。デイジーはギャツビーのかつての恋人だった。ギャツビーはデイジーのことが忘れられず、彼女との再会、そして彼女の愛を取り戻したいがため派手なパーティーを開いていたのだった。
そんなある日、ギャツビーからニックにパーティーへの招待状が届く。それはニックだけへのものだった――。
原作は米文学の最高峰に挙げられる1925年出版のF・スコット・フィッツジェラルドの同名小説。映画化は5度目だが、74年公開のロバート・レッドフォード主演作を想起する読者が多いのではないだろうか。
当時のレッドフォードは「スティング」「追憶」を大ヒットさせ向かうところ敵なし状態だったが、今回も「レオ様」ことレオナルド・ディカプリオがギャツビーを演じる。
レッドフォードのような端正なマスクではないが、時折みせる悪相が上流社会の中で出自の怪しさを表現するにはむしろハマリ役ではないか。
デイジー役のキャリー・マリガンは幼さが残るが、奔放な金持ち娘を好演。狂言廻し的役割のニック役は私生活でもディカプリオと親しいトビー・マグワイア。こちらも「スパイダーマン」のイメージを払拭する好演をみせている。
極彩色、3Dを駆使した絢爛豪華なパーティーシーンは見もの。当時の米国はジャズと禁酒法の時代で、日本のバブル時代をはるかに凌駕する狂騒ぶりだったとか。ディカプリオが生まれたのがレッドフォード版が公開された1974年というのも奇しき縁か。

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜8時)を担当。