徹底して山形に密着したフリーペーパー

<荒井幸博のシネマつれづれ> 人生、いろどり

2013年6月14日
過疎の町の「奇跡」

 不可能とされたリンゴの無農薬栽培に挑んだ実話「奇跡のリンゴ」が8日から公開され話題を呼んでいるが、6月26日~28日にかけて山形市中央公民館と山形テルサで公開される「人生、いろどり」も農業をテーマに実際の成功譚を映画化した感動作。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 人生、いろどり

 徳島県上勝町は人口1900人の四国一小さな過疎の町。基幹産業のミカン栽培が局地的冷害で壊滅状態になる中、若手農協職員の江田晴彦(平岡祐太)は町に活気を取り戻そうと、料理の飾りに添える「つまもの」と呼ばれる葉っぱを売り出そうと提案する。
 町中が反対するが、雑貨店を営む花恵(富司純子)と花恵の誘いを断り切れない農家の薫(吉行和子)の2人が江田の提案に賛同、さらに母の介護のために都会から帰ってきた幼なじみの路子(中尾ミエ)も加わり、平均年齢70歳の3人が葉っぱビジネスに挑む。
 だが町のほとんどは抵抗勢力で、市場に出荷してもゴミ扱い。それでも3人は諦めない。料理屋に通って「つまもの」の何たるかを学習し、売り込みに奔走する。その過程でそれぞれの悩みを抱えていた3人の人生にも変化が――。
 上勝町は実在し、農協職員の横石知二さんが60歳以上の女性たちと葉っぱビジネスを2億6千万円もの年商に育て上げた話は人口に膾炙している。「奇跡のリンゴ」も同様だが、良くぞ諦めずに頑張ったと拍手喝采を贈りたくなる映画だ。

 主要キャストは山形に縁が深いことを添えておく。横石さんがモデルの江田を演じる平岡は、置賜がロケ地の「スウィングガールズ」で女子高生ジャズバンドの中にあって唯一の男子高校生役だったほか、同作に出演し、方言指導も担当した米沢出身の眞島秀和が花恵の息子役を演じる。
 また富司は庄内がロケ地の「山桜」で、藤竜也は村山がロケ地の「小川の辺」でともに東山紀之の親を演じている。
 こうした山形との縁に思いを馳せながら鑑賞するのも一興かも。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 人生、いろどり
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜8時)を担当。