ドクター松本の医食同源(77)/糖尿病の食事療法(日本糖尿病学会の提言)
2013年4月26日
ご飯やパンなどの炭水化物(糖質)を極端に控える「糖質制限食」「糖質ダイエット」が注目されていますが、日本糖尿病学会はこのほど「安全性など科学的な根拠が不足しており、現段階では勧められない」とする提言を発表しました。
糖尿病、メタボが原因
この提言は「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言」。冒頭、日本で糖尿病(2型)が増加しているのはもともと日本人はインスリンの分泌低下をきたしやすい体質のうえ、肥満(メタボ)によりインスリンが効きにくい状態になるためとしています。
糖尿病や肥満の増加の原因として戦後の生活習慣の変化、運動不足などに加え、特に脂質を中心とする栄養摂取のバランスの崩れにあると指摘しています。

糖質だけ制限×
そのうえで、血糖値の改善や減量につながるとされる糖質制限食に対しては「個々の栄養素(糖質)に限定して論じることはできない」とし、各栄養素の摂取量を総合的に制限すべきという従来の立場を改めて強調しています。
推奨される食事療法
糖尿病に推奨される食事療法として、炭水化物の総カロリーに対する摂取比率は50~60%としています。これは1日1600キロカロリーの食事の場合、1食当たりのご飯の量として1・5~2杯分です。脂質は総カロリーの25%以下、たんぱく質は20%以下を推奨しています。
バランス良く摂取を
通常、日常の食事では脂肪だけを摂取することはなく、多くはたんぱく質を含むおかず(肉、卵など)と一緒に摂取しています。
糖質、脂質、たんぱく質をバランスよく摂ることが糖尿病の治療上最も大事なことです。


プロフィール
● (まつもと・みつお) 1985年山形大学医学部卒業。山形県立中央病院勤務の後、2007年5月に松本内科クリニックを開業。日本糖尿病学会認定糖尿病専門医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医。