徹底して山形に密着したフリーペーパー

<荒井幸博のシネマつれづれ> 草原の椅子

2013年2月8日
人生の岐路に立つ男女
 遠間憲太郎(佐藤浩市)はバツイチで大学生の娘と2人暮らし。
<荒井幸博のシネマつれづれ> 草原の椅子

中年男に3つの出会い

 ある日、取引先の社長・富樫(西村雅彦)から懇願され親友になることに。ふと目にした陶器商の女主人・貴志子(吉瀬美智子)には淡い想いを寄せるのだった。
 そんな遠間は母親から受けた虐待で心を閉ざし、言葉を発しない4歳の少年・圭輔(貞光奏風[かなた])を預かる破目になる。富樫や貴志子も圭輔の行く末を真剣に案じるようになる。
 将来への不安や過去の負い目を抱く中年男女3人は心に傷を負った圭輔を連れ、世界最後の桃源郷とされるパキスタンのフンザへと旅立つのだった――。
 原作者の宮本輝が映像化は不可能と諦めていたフンザでの長期撮影を敢行。その美しく雄大な光景は圧巻で、ロケ隊の努力は見事に報われている。圭輔がひたむきに砂漠を健気に走り続ける後姿に涙が溢れる。
 離婚、リストラ、自殺、幼児虐待と今どきの暗いテーマを描きながら、人生の岐路に立ち今後の生き方を模索する登場人物たちから「人生まだまだこれから」と思わせられる映画だ。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 草原の椅子
熱く語る佐藤さん

 主人公を演じる佐藤浩市さんは昨年4月に東北芸工大文芸学科客員教授に就任。初の特別講義のため1月30日に来形した佐藤さんに話を伺う機会に恵まれた。
 「信長の時代は人間50年でしたが、今は70年、80年という時代。50歳でもう1度人生を見つめ直し、修正するのも大事ではないでしょうか」
 佐藤さんはクールで気難しそうな印象を持たれがちだが、実は誠実で温かい人。14年前に「あきた十文字映画祭」で初めてインタビュー、6年前「ひがしね湯けむり映画祭」でトークショーを90分ご一緒した時と変わらず、映画への熱い想いを真摯に語ってくれた。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 草原の椅子
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜8時)を担当。