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<荒井幸博のシネマつれづれ> 「終の信託」周防正行監督

2012年10月26日
大人の恋と医療問題
<荒井幸博のシネマつれづれ> 「終の信託」周防正行監督

 折井綾乃(草刈民代)は患者からの評判もいい呼吸器内科のエリート医師。だが長く不倫関係にあった同僚医師の高井(浅野忠信)から別れを告げられ、失意のあまり泥酔して自殺未遂騒動を起こしてしまう。そんな綾乃を見守り、心の傷を癒してくれたのは重度の喘息を患い入退院を繰り返していた江木秦三(役所広司)だった。
 綾乃と江木は医師と患者の枠を超えた信頼関係で結ばれていくが、病状の悪化で死期が迫っていることを自覚した江木は綾乃に「信頼できるのは先生だけだ。最期のときは早く楽にして欲しい、肉の塊になって生きながらえるのは耐えられない」と懇願する。
 2カ月後、江木は心肺停止状態に。江木の望み通り安楽死させるのか、延命の努力を続けるのか。決断を迫られた綾乃は遂に重大な決断を下すのだった。 
 3年後、検察庁に出頭を命じられた綾乃は検察官の塚原(大沢たかお)から殺人罪で厳しい追及を受ける。綾乃も信念を持って塚原に対抗するのだが――。 

<荒井幸博のシネマつれづれ> 「終の信託」周防正行監督

 医療と司法のあり方を問いながらも究極のラブストーリー。弁護士でもある朔立木(さくたつき)の同名小説の映画化。先日、キャンペーンのため山形を訪れた周防正行監督(写真)に伺う。
 「完璧な医療や司法のシステムの中でもそこからこぼれ落ちる人たちがいる。描きたかったのはそんな人たちで、本当にいい映画、映画らしい映画を作りたいと思った。(医療や司法の)システムを見せるというより人を見せたかった」
 監督の妻である草刈民代と役所広司の共演は「Shall we ダンス?以来。
 「2人の共演は16年ぶりですが、当時の草刈は女優ではなくバレリーナだったのでお客様として映画の世界に迎えた。今回は本格的に女優として歩み出す1作目の映画なのでなんとしても役所さんに見届けて欲しかった。相手役は役所さんしか考えられなかった」
 そんな監督の想いに2人は見事に応えていた。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 「終の信託」周防正行監督
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜8時)を担当。