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<荒井幸博のシネマつれづれ> 天地明察

2012年9月28日
天への男のロマン描く

 「おくりびと」の滝田洋二郎監督の新作「天地明察」が公開中だ。

原作は直木賞候補に
 
 原作は2009年に冲方丁(うぶかたとう)が発表し、吉川英治文学新人賞、本屋大賞、北東文芸賞を受賞、第143回直木賞にもノミネートされた同名小説。
 物語の舞台は17世紀半ば、徳川4代将軍の家綱の治世。名門の出で代々将軍に囲碁を教える安井算哲(岡田准一)は対局より算術と星の観測に夢中。「好きこそものの上手なれ」とは良く言ったもので、算哲の算術と天体好きは広く喧伝(けんでん)されるところとなり、家綱の後見人である会津藩主・保科正之(松本幸四郎)から日本全国で北極星の高度を測ってその土地の位置を割り出す「北極出地」を命じられる。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 天地明察

新暦の採用を巡り…。

 幕府の重臣の建部伝内(笹野高史)と伊藤重孝(岸部一徳)らと1年半にわたる旅を終え、暦のズレが判明すると、今度は天下の副将軍・水戸光圀(中井貴一)の肝いりもあり、新しい暦作りの総大将に任命される。天体観測と数理解析を重ねた結果、幕府は算哲が提唱する大和暦への改暦を帝(みかど)に請願するのだが、暦の利権を握っていた公家たちの激しい抵抗にあい、あえなく却下されるのだった――。
 
岡田准一が存在感

 囲碁のライバル・本因坊道策(横山裕)、村瀬塾・村瀬義益(佐藤隆太)、天才和算家・関孝和(市川猿之助)らとの出会い、友情、村瀬の妹えん(宮﨑あおい)との恋。妻となる宮﨑の内助の功ぶりも印象に残るが、なにより岡田准一の爽やかな存在感が全体を索引している。
 
金環日食に思い馳せ

 クライマックスの新暦採用を賭けた「日食勝負」は手に汗握る名場面。天体に興味がなかった不明を恥じるとともに、惜しむらくは5月21日の「金環日食」前後に本作を観たかった。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 天地明察
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜8時)を担当。