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<荒井幸博のシネマつれづれ> 高倉健6年ぶり主演作「あなたへ」

2012年8月24日
亡き妻の郷里訪ねる旅
 富山の刑務所の指導技官、倉島英二(高倉健)は寡黙(かもく)な男だった。
<荒井幸博のシネマつれづれ> 高倉健6年ぶり主演作「あなたへ」

平戸まで1200キロ

 50歳目前で刑務所に慰問(いもん)に来た歌手の洋子(田中裕子)と結婚。平穏で幸せな日々を過ごしていたが、洋子はがんのため53歳で早逝(そうせい)してしまう。
 ある日、英二のもとに洋子が遺した「あなたへ」と書かれた2通の絵手紙が届く。1通には「自分の遺骨は故郷の海へ散骨して欲しい」と記され、もう1通は、洋子の故郷・長崎県平戸市の郵便局への局留めで、受け取り期限まで10日しかなかった。妻の「あなたへ」の真意を知るため英二はキャンピングカーで平戸まで1200キロ の旅に出るのだった。

過去の名作を想起

 健さん、旅とくれば思い出すのは山田洋次監督の「幸福の黄色いハンカチ」(1977)。網走刑務所での刑期を終えた男が待っているか分からない妻が住む夕張まで、途上で出会った若い男女と旅をするという感動の名作だった。
 また、妻と2人で居酒屋を営む男のかつての恋人が非業の死を遂げる降旗康男監督「居酒屋兆治」(1983)で健さん演じる主人公が英治で今回が英二。過去の代表作が否応なくカブる。

降旗監督と豪華共演陣

 本作の監督も降旗監督で、健さんとのコンビは20作に及ぶ。共演はビートたけし、佐藤浩市、浅野忠信、草彅剛、綾瀬はるか、大滝秀治、長塚京三、余貴美子、岡村隆史など多彩。こんな豪華な面々に加え、27作品で健さんと共演した田中邦衛がいればなあと無いものねだりをしたくなる。

邦衛さんがいれば

 共に80歳を過ぎた健さんと邦衛さん。デビット・リンチ「ストレイト・ストーリー」のように、年老いた2人の兄弟が長年の確執を越えて560キロの旅の果てに再会するような映画を観てみたいものです。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 高倉健6年ぶり主演作「あなたへ」
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜8時)を担当。