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《おしえて!編集長》 「伝統工芸を守れ」VS「自然を守れ」 平清水焼どうなるの?

2012年7月27日
 やまコミ読者のみなさんは「平清水焼」ってご存知ですか?山形市平清水で作られている陶磁器の総称で、ルーツは江戸時代までさかのぼるとか。そんな伝統工芸の平清水焼が存亡の危機にあるんですって!何がどうなっているのか、編集長に聞いてみました。
《おしえて!編集長》 「伝統工芸を守れ」VS「自然を守れ」 平清水焼どうなるの?

平清水焼、編集長は詳しいんですか?

 ルーツは江戸時代

 「もちろん存在は知ってたし、買って人に贈ったこともある。でも詳しくは知らなかったんだけど、調べて詳しくなりましたよ」
 「平清水焼のルーツには諸説あるけど、江戸時代半ばの文化年間(1804~1817年)に常陸(茨城県)の陶工がこの地に住み着いて陶器を焼いたのが始まりという説が有力だ」
 「その平清水焼の特長は山形市のシンボルになってる千歳山で採取した石を砕き、これを原料にすることで得られる『梨肌(なしはだ)』という独特の風合い。一時は数ある全国の陶器の中でも『焼き物といえば有田か平清水』と称され、最盛期の明治中期には37の窯元があったとされる」

《おしえて!編集長》 「伝統工芸を守れ」VS「自然を守れ」 平清水焼どうなるの?
ふ~ん。

 安価な競合品が流入

 「その後、鉄道が発達して安価な瀬戸物が流入してくるようになると下火になり、窯元はだんだん減っていく。そんな中でも1958年にベルギーのブリュッセルで開催された万国博覧会に出品したところグランプリを獲得、『平清水』の名は世界にとどろいたんだ」
すご~い

 「ただ、今や百円ショップであらゆる食器が買える時代で、平清水焼に限らず各地の陶芸はどこも青息吐息。平清水で伝統工芸を守ろうと今でも頑張ってるのは青龍窯、七右エ門窯、平吉窯の3つだけになっちゃた」

存亡の危機っていうのはそういう話なんですか?

 原料は国有林から  

 「それはそれとして今問題になっているのは別次元の話。さっき平清水焼は千歳山の石を原料にするって言っただろ。厳密には千歳山の一部の丸山というところの『丸山陶石』って石なんだけど、これが使えなくなるかもしれないんだ」

エー、エー、エー、詳しく説明して下さい。

《おしえて!編集長》 「伝統工芸を守れ」VS「自然を守れ」 平清水焼どうなるの?

 「まず丸山を含む千歳山は国有林だ。国有林から勝手に石を削り取って持ち帰ったらマズいよね。そこで昭和30年ごろから千歳山を管理する山形森林管理署が平清水焼組合と毎年『売買契約書』を締結し石を副産物として払い下げるという形式をとっていた」
 「最近だと量は6立方メートル、価格は11万円の年が多かったようだ。平清水焼の値段からすればまあ二束三文なんだろうなあ」
 
 削るのはダメよ

 「現地は陶石になる石英粗面岩が露出してたらしい。これが風雪にさらされて少しづつ崩れ落ちてたのは間違いないんだって。森林管理署とすれば『それを副産物という扱いにするから自分たちで削ったらダメだよ』ってことだったんだろう。ひと昔前はともかく、今では窯元も3つに減っちゃたから原料としてはそれで十分だったらしい」

なんで話が過去形なんですか?

 工事で原料ストップ

 「ここからが本題。3年前に森林管理署が山肌を守るため治山工事をして岩が露出してた部分全体を覆っちゃったんだ。結果として石が崩れ落ちることがなくなって副産物も出なくなり、売買契約書に基づく払い下げもストップしてる。窯元は新たな原料の調達ができずに在庫でしのいでる状態なんだよ」

何故そんな工事を?

《おしえて!編集長》 「伝統工芸を守れ」VS「自然を守れ」 平清水焼どうなるの?

 千歳山を守る工事

 「また話がややこしくなるんだけど、ひところ千歳山周辺の住民の間で『千歳山の松を守ろう』って運動があったの知ってるかな。彼らは阿古耶姫の悲恋伝説が伝わる千歳山の松を守るため、森林管理署に対し雑木の伐採を含む整備を20年近くにわたって要望し続けた。この運動に最終的には市も同調した」
 「千歳山が保安林に指定されていることを理由に当初は渋っていた森林管理署もついに重い腰を上げ、2008年度から今年度までの5カ年計画で『千歳山松林再生プロジェクト』に乗り出したんだ。3年前の工事もその一環さ」

なるほど

 「聞いてない」「説明した」

 「ただ窯元は丸山が工事の対象になるなんて聞いてなくて、工事が始まってから初めて事態の重大さに気づいたんだって。一方の森林管理署は『工事をして副産物の払い下げができなくなることはちゃんと説明したはず』って譲らない」
 「挙げ句は『言った、言わない』の議論になってるんだけど、伝統工芸の存亡という認識があれば森林管理署が説明責任を十分果たしてないって指摘は免れないかもね」
 

どういう形で決着するんですかね?

 頭抱える市

 「違う石を原料にすることに対しては、千歳山の石じゃないと平清水焼の風合いは出せないって窯元は反対してる」
 「長い過去からの経緯や説明責任での負い目からか、森林管理署は必ずしも四面四角じゃなくて『市からの要望でもあれば…』みたいなことをにおわせてるけどね」
 「ただ市のスタンスが微妙。産業を保護しなきゃいけない一方で千歳山の整備も要望した経緯があり、『どちらを優先して守るかは担当レベルでは決められない』って頭を抱え込んでる」

複雑な問題ですね。

 ボタンの掛け違い?

 「丸山は千歳山の一部で同じ国有林だけど保安林には指定されていない。『守ろう』のメンバーに聞いても丸山は自然を守る対象じゃなくて『あそこは昔からの採石場』という認識なんだな」
 「丸山を含む千歳山が国有林になったのは明治初頭。今さら詮無いけど平清水焼は江戸期から丸山が採石場だったんだから、この時に『丸山は国有林から外せ』って議論をすべきだったんだよ」
 「そもそもはここがボタンの掛け違いだと思うよ。だから今になってみんなが弥縫策(びこうさく)で窮するんだ」
 「今回の問題にしても去年の芸工大の統合問題にしても、山形って大事な時に議論しなくて後で大騒ぎするケースが多いよね」