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<荒井幸博のシネマつれづれ> エンディングノート

2012年2月24日
父の最終章を娘が記録

 異色のドキュメンタリー映画だ。
 
がん宣告で「段取り」

 砂田知昭は高度経済成長期に営業一筋で会社を支えた猛烈サラリーマン。役員まで登りつめ、67歳で退職して悠々自適の第二の人生を歩み始めた矢先、医師から末期の胃がんを宣告される。サラリーマン時代は「段取り命!」だった砂田は、自らの死に至る段取りと、その集大成ともいえるエンディングノートの作成に取り組んでいく――。

<荒井幸博のシネマつれづれ> エンディングノート

死期迫り、その時…。

 この映画の監督は砂田の娘の麻美。残り少ない時間の中で人生を全うしようとする父と、父を取り巻く家族をカメラが淡々と追う。
 この家族は昔から何かにつけ映像を記録していたようで、今から20年ほど前の夫婦喧嘩を撮影していた麻美は当時14歳。 父が着手した段取りは自分の葬儀にも及ぶ。簡素化のため教会を選択し、洗礼も受ける。その一方で病状は日を追うごとに悪化、医師から肝臓が3倍に膨れ上がっているレントゲン写真を見せられ驚愕するが、父にとっては医師とのやり取りも人生最終プロジェクトの打ち合わせに過ぎない。
 死後の連絡先、有価証券や不動産などの詳細、分配法などを細かく記入したエンディングノートも完成させ、憂うことなく、最期を迎えると思いきや、死期が近いのを悟り、病室で人払い。妻と2人きりになった時に初めて、思いの丈を妻に伝える。妻も素直に応えるのだった。そして父、砂田知昭は69歳で逝く。

心に沁みる「天国さん」

 本作はお涙ちょうだいの闘病記ではない。主人公の愛すべきキャラクターもあって随所に笑いも誘う。ただ、やはり涙。エンディングで流れるハナレグミ「天国さん」が心に浸みる。
 これは娘から父への渾身のラブレターなのではないか。同じ娘を持つ父親としてジェラシーを感じてしまった。


<荒井幸博のシネマつれづれ> エンディングノート
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。