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<荒井幸博のシネマつれづれ> ヒミズ

2012年2月10日
昇り竜の園子温監督

 さながら今年の干支のように、最近の園子温(そのしおん)監督(50)は昇り竜のような勢いだ。

<荒井幸博のシネマつれづれ> ヒミズ

国際映画祭を総なめ

 2009年に「愛のむきだし」をベルリン国際映画祭、10年には「冷たい熱帯魚」をベネチア国際映画祭、さらに11年には「恋の罪」をカンヌ国際映画祭と、3年連続で3大映画祭出品という快挙を成し遂げている。
 歯に衣着せぬ発言でも知られ、「冷たい熱帯魚」が第54回ブルーリボン賞作品賞に輝いた1月24日の受賞者インタビューでは「キムタクを映画に出すな」「芸人が映画を撮るのはやめろ」と発言。これは、人気者に依存しようとする映画界に喝を入れようとしたものだろうが、ジャニーズ事務所、吉本興業を批判した過激な発言と話題になった。

東日本大震災を題材に

 そんな園監督の最新作が「ヒミズ」。原作は漫画家の古谷実が週刊ヤングマガジンに01年から03年にかけて連載した人気コミックで、舞台を東日本大震災の被災地に置き換えての映画化。劣悪な環境のもとで八方塞りの状況に陥る少年、彼に恋心を抱く孤独な少女、そして2人を取り巻く様々な大人たちが登場する。
 主演は染谷将太と二階堂ふみで、2人はこの作品で昨年9月開催のベネチア国際映画祭で日本人初の最優秀新人俳優賞をダブル受賞している。
 若い2人の脇を固めるのは渡辺哲、でんでん、吹越満、神楽坂恵、光石研、渡辺真起子、黒沢あすか、村上淳など園作品なじみのベテラン俳優、それに窪塚洋介ら新顔が見事なコラボを見せる。
 
深刻な中にも希望が

 妥協のないバイオレンス描写や凄惨(せいさん)さに思わず息を呑むが、希望もにじませる。震災以降、「頑張れ」という言葉への風当たりが強くなっているが、「そうか、『頑張れ』も悪くないんだな」と思わせてくれる。
 今や世界が新作を待ち望むようになった園監督だが、1998年には立川町(現在の庄内町)を舞台に「風」という短編映画も撮っています。


<荒井幸博のシネマつれづれ> ヒミズ
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。