徹底して山形に密着したフリーペーパー

医学のうんちく/精子戦争

2011年11月25日
 精子の寿命は約5日。いきなりキワどい話で恐縮ですが、女性の膣内で異なる男性の精子が共存することはありえます。

精子間で役割分担

 その場合、それぞれの男性の精子は卵子を受精させるために争います。英マンチェスター大学のベーカー教授によれば、精子は役割によりカミカゼ集団とエリート集団に分けられ、カミカゼ集団の役割は受精ではなく、ひたすら敵を攻撃することにあります。この集団はブロッカー(守り屋)精子とキラー(殺し屋)精子で構成されます。

医学のうんちく/精子戦争

外敵の子宮侵入を阻止

 ブロッカー精子は年老いた精子が中心で、役割は子宮頚(けい)管内に多く留まり、群れを作って他人の精子の子宮内への進入を防ぐことにあります。そのため形状は尻尾がコイル状に曲がっていたり、胴体が曲がっていたり、デカ頭や複数の頭を持っていたりと、子宮頚部に留まりやすい構造になっています。1回の射精で数は数千万です。
 
大量毒殺も狙う

 キラー精子は他人の精子に出会うと、自分の鋭い頭の先で相手の頭の横の弱い部分を狙って突っつき、腐食性の毒素を注ぎ込み殺してしまいます。1匹のキラー精子が持っている毒で大量の相手の精子を毒殺することができます。
 
エリートはひと握り

 エリート集団は受精のためのひと握りの精子でエッグ・ゲッター(卵獲得)精子と呼ばれています。エッグ・ゲッター精子はキラー精子と同様よく動きまわり、外見も酷似していますが、頭部がキラー精子よりやや大きいのが特徴です。 
 約100万匹のエッグ・ゲッター精子は約2億匹のキラー精子に囲まれながら卵子を求めて行動します。

あな恐ろしき女性

 この女性の場合、妊娠する過程で数億匹の精子を自らの膣内で戦わせているわけですね。


医学のうんちく/精子戦争
【今回の先生】 山形徳洲会病院長 笹川 五十次(ささがわ・いそじ)

1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業。95年からHawaii州立大学医学部で「雄性細胞の核移植(不妊治療)」について研究。02年に「男子外性器異常の発症における分子生物学的解析」で「とやま賞」受賞。04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。