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<荒井幸博のシネマつれづれ> ステキな金縛り

2011年11月11日
様々な角度で楽しめる

 宝生エミ(深津絵里)は、負け続けで自信を失いかけている弁護士。

<荒井幸博のシネマつれづれ> ステキな金縛り

幽霊を法廷に

 彼女が背水の陣として担当になったのは資産家の妻殺し容疑で逮捕された矢部五郎(KAN)の弁護。被告人は事件があった時刻に「しかばね荘」という旅館で落ち武者の幽霊に出会い、金縛りにあっていた完璧なアリバイがあると無実を主張する。
 無実を証明できるのは、その落ち武者の幽霊だけ。エミは「しかばね荘」を訪れて幽霊の更科六兵衛(西田敏行)と出会い、法廷で証言してくれるよう説得する。だが六兵衛の姿は誰にでも見えるわけではなく、法廷では超常現象を全く信じない敏腕検事の小佐野徹(中井貴一)がエミの前に立ちはだかるのだった。 

深津絵理の才能開花

 主演の深津絵理は「ザ・マジックアワー」に続く三谷幸喜作品。コメディエンヌとしての才能が見事に開花し、喜劇では定評のある西田敏行を相手に引けを取らない。堅物検事役の中井貴一もまたイイ。阿部寛、小日向文世、竹内結子、浅野忠信など個性的なキャストも精彩を放っている。
 三谷が尊敬するビリー・ワイルダーの「情婦」(1957)の法廷を思わせる、美術の種田陽平による荘厳な法廷セットも大きな役割を果たしている。落ち武者の幽霊を証人として裁判に召喚するという荒唐無稽(こうとうむけい)の設定ながら法廷サスペンス、喜劇、友情、成長、「フィールド・オブ・ドリームス」のような父と子の感動物語、と様々な角度で楽しめる作品だ。

西田敏行に拍手

 西田敏行は11月4日が64歳の誕生日。6月には主演作「星守る犬」が公開されたが、現在は「ステキな金縛り」のほかにも「探偵はBARにいる」「はやぶさ/HAYABUSA」が公開中。「釣りバカ日誌」が2年前に終焉した寂しさを感じさせない活躍ぶりに拍手を贈りたい。


<荒井幸博のシネマつれづれ> ステキな金縛り
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。