ドクター松本の医食同源(67)/健康的な食生活(中)
糖質制限の落とし穴
人間は糖質、たんぱく質、脂質を三大栄養素として摂取しています。仮に糖質を全く摂らなくても肝臓でたんぱく質や脂質から糖質をつくることができるので(これを「糖新生」といいます)糖質が枯渇することはありません。ただ糖新生で必要な糖質を得るには通常の3倍以上のたんぱく質や脂質を摂取する必要があります。

糖新生には限界が
具体的にはサンマなら1日5尾、豚ロースなら1日660グラム、卵なら1日16個を食べなければなりません。朝昼晩に三等分しても現実的には無理ですよね。
また脂肪の摂取量を増やせばコレステロールや中性脂肪が高値になり、通常の食事と比べて動脈硬化が進むことが分かってきました。つまり心筋梗塞や脳梗塞になりやすくなるのです。
糖尿病患者の場合
これが糖尿病をお持ちの方ですと、肝臓での糖新生が健常者の3倍ほど多いため、たんぱく質や脂肪の過剰摂取で空腹時の血糖が悪化してしまいます。また血液中の脂肪が上昇するとインスリンが効きにくくなり血糖値が上がってしまいます。
腎不全や人工透析にも
さらに高たんぱくの食事は腎臓に負荷がかかり糖尿病性腎症を悪化させ、腎不全、人工透析に至ってしまう危険性も。たんぱく質は一般に味付けなしでは食べにくいため塩分摂取量も増え、結果的に高血圧を悪化させることもあります。
健康的な食事を
こうしたことから日本糖尿病学会では、健康的な食事としては日本食をもとに糖質は55~60%、たんぱく質25%前後、脂質15~20%以下を推奨しています。

1985年山形大学医学部卒業。山形県立中央病院勤務の後、2007年5月に松本内科クリニックを開業。日本糖尿病学会認定糖尿病専門医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医。