ドクター松本の医食同源(66)/健康的な食生活(上)
増える糖尿病患者
昭和30年代は3大栄養素のうち糖質の占める割合が80%、脂質が7%、たんぱく質が13%でしたが、平成になると糖質58%、脂質26%、たんぱく質16%に変わっています。糖質は3割少なくなり、逆に脂質は4倍近く増えたことになります。
これは肉食を中心にした食生活の欧米化や、手軽なファストフードやコンビニなどの登場が大きいと考えられます。このように糖質が減って脂質が過剰になっていることが糖尿病患者を増やす要因になっているのです。

過剰脂質⇒インスリン減
単純に考えると、糖質が減れば糖尿病になりにくい感じがしますが、過剰な脂質が「脂肪毒性」といってインスリンの働きを悪くしてしまうのです。欧米人と違って日本人はもともとインスリンの分泌が少なく、インスリンの働きが悪くなれば簡単に糖尿病になってしまいます。
身体に必要な糖質
最近では極端に糖質を減らす、または全く摂らないといった食事療法も一部でみられます。確かに人の身体にはたんぱく質や脂質から糖質を作り出す仕組みがあります。
ですが、この仕組みは食物がない非常事態に備え最も重要なエネルギー源である糖質を体内の脂肪や筋肉から作り出すためのものです。普段の食事でたんぱく質や脂質だけを摂って身体に必要な糖質を作り出すためのものではありません。
偏りのない食生活を
人の身体はガソリンと電気の両方を利用するハイブリッド車に似ており、ガソリン(糖質)がない状態では電気(たんぱく質、脂質)だけで長距離を走り続けることはできません。このことを頭に置き、偏りのないバランスの良い食事を心がけましょう。

1985年山形大学医学部卒業。山形県立中央病院勤務の後、2007年5月に松本内科クリニックを開業。日本糖尿病学会認定糖尿病専門医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医。