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<荒井幸博のシネマつれづれ> エクレール お菓子放浪記

2011年9月9日
人の優しさ訴える映画
 「お菓子の好きな巴里(パリ)娘 2人そろえばいそいそと 角の菓子屋へ ボンジュール」――。
 これは昭和3年に世に出た西條八十作詞、橋本國彦作曲「お菓子と娘」の一節。寡聞(かぶん)にしてこの歌を知らなかったが、現在、県内で順次公開中の「お菓子放浪記」を観て初めて知った。
<荒井幸博のシネマつれづれ> エクレール お菓子放浪記

菓子に憧れる主人公

 昭和18年、戦争で孤児になったアキオはお菓子に対する強い憧れを持っていた。孤児院を飛び出し、飢えをしのぐためにお菓子を盗み感化院に入れられてしまう。
 そこで鬼のような教官によるイジメのような指導を受けるが、唯一やさしく接してくれる陽子先生が唄う「お菓子と娘」は心のやすらぎになり、感化院を出た後も何かにつけて「お菓子と娘」を歌って自分を元気づけるのだった。
 また人情味厚い遠山刑事、働いた映画館の人たち、旅回り一座の座長など、アキオに優しく手を差し伸べてくれる大人が絶えず現れるのだった。

大震災で公開延期に

 原作は作家の西村滋で自身の少年時代の体験を綴った。主人公アキオにミュージカルなどで活躍中の吉井一肇(11)。脇を固めるのは林隆三、いしだあゆみ、遠藤憲一、高橋恵子、尾藤イサオといった実力派。
 この映画は昨年10月に石巻市を中心に撮影され、3月26日からの上映を計画していたが、東日本震災の壊滅的状況に立ちつくすだけだった。

被災地の人にも元気を

 あれから半年。当初からこの映画が訴えようとした「人のやさしさのつながり」はいっそう大きな意味を持つようになった。復興に立ち上がった被災地の人たちの背中も押してくれるはずだ。
 
山形市で10月15日から

 アキオが歌う「お菓子と娘」が以前より力強く感じるのは私だけだろうか。山形市での公開は10月15日からムービーオン山形で。


<荒井幸博のシネマつれづれ> エクレール お菓子放浪記
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。