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<荒井幸博のシネマつれづれ> あの空をおぼえてる

2008年4月11日
琴線に触れる家族愛

鶴岡市出身 冨樫森監督作品
  
 鶴岡市出身の冨樫森監督の新作「あの空をおぼえてる」が公開される。昨年秋に東京・調布市の日活撮影所に取材でうかがってからというもの、首を長くして待っていた待望の作品だ。
 写真館を営む深沢雅仁は、妻・慶子、心優しい小学4年生の長男、お転婆で明るい幼稚園児の長女と幸せな暮らしを送っていた。慶子のお腹には新しい命も。そんな深沢家を突然の不幸が襲う。

<荒井幸博のシネマつれづれ> あの空をおぼえてる

一家を突然襲う不幸

 子ども2人がトラックにはねられ、息子は重体、娘は幼い命を散らしてしまう。悲しみに打ちひしがれる雅仁と慶子。
 それでも生まれてくる子どものために慶子は前へ進もうとするが、雅仁は悲嘆にくれたまま。長男はそんな父親を見て、妹を守れなかった自分を責め、天国の妹に手紙をつづるようになる——。
 富樫監督に取材するため乗り込んだ山形新幹線の中で台本に目を通す。後半は涙が溢れ出て止まらなくなってしまった。

光る子役2人の演技

 この映画は2 人の子役、広田亮平君と吉田里琴ちゃんが鍵を握る。息子の健気さ、娘の愛らしさがなければ全ての説得力を失ってしまう。取材当日の撮影は雅仁と慶子の室内シーンだけで、子役の演技は見られなかったが、雅仁役の竹之内豊さんも慶子役の水野美紀さんも2人を絶賛していたのが印象深い。
 冨樫監督によれば、4人は岐阜県の撮影現場で初顔合わせした時から家族同然だったとか。

<荒井幸博のシネマつれづれ> あの空をおぼえてる
映画の成功を確信

 竹之内さんと水野さんのピーンと張り詰めた素晴らしい演技を見学、子役2人のセンスの良さをうかがい、映画の成功を確信したのだった。
 そして2月15日の東京での試写会。小池栄子、小日向文世、中嶋朋子、品川祐ら脇役陣の充実、美しい映像、的確な音楽も加味され、期待に違わぬどころか、期待をはるかに超える感動作になっていた。やはり子役の2人は特筆すべき演技センスの持ち主だった。

竹之内さんとの語らい

 取材中に竹之内さんから「荒井さんが突然お子さんを亡くしたらどうされますか?」と逆取材され、答えに窮したことを思い出した。映画を観た今なら「竹之内さんが演じた雅仁そのものでしょうね」と答えられます。

<荒井幸博のシネマつれづれ> あの空をおぼえてる

山形の映画パワー
 
  間違いなく、竹之内さんと水野さんにとって本作はエポックメイキングな作品になるだろう。そして、この充実した俳優陣を演出し、大勢のスタッフを陣頭指揮してこれだけの作品に仕上げた冨樫監督を、同県人として誇らしく思う。