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丸十大屋(山形市)

2007年7月13日
チャレンジ続ける老舗
丸十大屋(山形市)

 山形市の丸十大屋は創業1844年(天保15年)の老舗の醤油・味噌メーカーだ。東北地方の山形で、しかも老舗の醤油・味噌メーカーというと一般には「保守的」といったイメージを抱きがちだが、伝統の良さを残しながら絶えず新分野にチャレンジし続ける気鋭の老舗企業である。

紅花商人の流れ汲む

 創業家の佐藤一族は、江戸時代中期から盛んになる紅花の交易で財をなした「紅花商人」の流れを組む。当主は代々、利右衛門を名乗り、現在の佐藤利右衛門社長は7代目。紅花商で創業したが、安価な化学染料の台頭などに押され、明治時代に味噌の醸造、大正時代に醤油の醸造に進出したという。

売上高 9割が醤油

 現在は全売上高の90%が醤油、残り10%が味噌という構成。全国的に醤油は前年比マイナスが続いており、同社にとっても逆風が吹いているのかと邪推したのだが、どっこい違う。その理由を探っていくと、同社の醤油は醤油でありながら通常の醤油ではないという結論に行き着く。

付加価値狙い「つゆ」

 東京出身の筆者にとって醤油といえば濃い口醤油を連想するが、山形にとどまらず東北では醤油が万能ではない。醤油と同様、あるいはそれ以上に欠かせないのが「つゆ」という存在。「つゆ」は醤油にカツオ節などの旨み成分を加えて付加価値を高めた商品で、麺類や煮物、おひたしや刺身まで幅広い分野で使われるとか。丸十大屋の主力商品「味マルジュウ」も、厳密には醤油ではなく「つゆ」なのだ。

地元では広く浸透

 同社が「味マルジュウ」を投入したのは昭和39年で、当時は醤油の価格競争が厳しくなり、各社の経営が苦しくなった時代。汎用品から高付加価値品へとウエートを移そうとしたが、発売当初は高価格が敬遠され、鳴かず飛ばずの時代が10年以上続いたという。
 結果的には「味マルジュウ」は昭和50年代以降、同社の主力商品に育っていくわけだが、この間、歯を食いしばって開発努力を怠らなかったことが同社の真骨頂。カツオ節、宗田節、サバ節、煮干などを手作業で抽出、甘みは三温糖を使う基本ベースを構築し、現在では村山地区を中心に「地元の調味料」として広く浸透している。

丸十大屋(山形市)

安全・安心を追求
   
 品質保証や食の安全への取り組みも特筆に値する。遺伝子組み換え作物の安全性が論議になった1999年、米国の有機農産物改良協会(OCIA)の認証工場となり、「オーガニックみそ」を発売して地元や業界をアッといわせた。
 さらに2000年には品質管理の国際標準規格である「ISO9001」の認証を取得、設計と開発部門を含めた同認証の取得は業界初として話題を呼んだ。
 同認証の取得がきっかけになってフランス最大の小売業、カルフールへの「つゆ」納入が決まる。フランスほか欧州は日本とは比較にならないほど食の安全に対する関心が高く、その欧州市場への参入が認められたのは安全に対する同社の積極的な取り組みが評価されたといっていいだろう。

「IS022000」取得

 その後も03年に日本農林規格(JAS)法に基づいて自社で製品の格付けが行える「Aシステム工場」の指定を受けたり、06年には原材料の分析用に近赤外線自動分析装置を導入するなど、安全・安心への取り組みは同業他社でも群を抜く。6月22日には食品安全の国際基準である「ISO22000」の認証を取得、県内企業としては初の快挙だ。

県外・国外開拓がカギ

 そんな同社にとっても、課題は何といっても新規需要の開拓だろう。山形では人口の減少傾向が続いており、新規需要を開拓するには県外、ひいては国外への進出が不可欠と思われる。その場合も同社が積み重ねてきた安全・安心への取り組みは大きな武器になるはずで、今後に注目したい伝統企業といえる。

■株式会社丸十大屋
・社長 佐藤利右衛門氏
・所在地 山形市十日町3−10−1
・創立 1953年(昭和28年)
・資本金 3000万円
・従業員 44人
・事業内容 醤油・味噌製造