ドクター松本の医食同源(62)/緊急時の糖尿病治療(下)
2011年5月27日
災害などで食事が十分に摂れない場合のインスリン治療や内服治療の注意点などを説明してきましたが、食事が摂れないといっても、食べ物自体がない場合と病気で食事が摂れない場合とでは全く事情が異なります。
感染症にかかると…。
インフルエンザなどのウィルス感染症や肺炎、扁桃炎(へんとうえん)などの細菌感染症にかかると炎症に伴い高熱が出ます。このような場合、炎症を改善しようとするホルモンや、炎症というストレスにより放出されるホルモンが体内に増加します。これらのホルモンは血糖を上昇させ、糖尿病のある方では食事を摂らなくても血糖値が高くなります。

インスリン注射は?
インスリン治療を行っている人が食事が通常通り食べられないからといって突然注射を中止すると、極端な高血糖を生じ、糖尿病性昏睡に至る可能性があります。
このような場合は決してインスリン注射を中止せず、たとえ食べる量が限られていても通常通りのインスリンを注射します。高血糖の状態によっては通常より増量しなければならないこともあります。
経口血糖降下薬は?
経口血糖降下薬の場合も発熱を伴う感染症などでは血糖を下げる効果が十分現れず、高血糖を生じます。「食べられないのに薬を飲んだら低血糖になるのでは?」と心配して薬を中断すれば予想外の高血糖になってしまいます。感染症や高血糖の程度によっては薬から一時的にインスリン注射へ変更することが必要な場合もあります。
ただ血糖降下薬には食べられない状態で飲み続けると重い副作用を生じるものもあり、休薬が必要なこともあります。
主治医によく相談を
いずれにしても自己判断をせず、主治医によく相談することが必要です。

松本 光生(まつもと・みつお)
1985年山形大学医学部卒業。山形県立中央病院勤務の後、2007年5月に松本内科クリニックを開業。日本糖尿病学会認定糖尿病専門医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医。
1985年山形大学医学部卒業。山形県立中央病院勤務の後、2007年5月に松本内科クリニックを開業。日本糖尿病学会認定糖尿病専門医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医。