徹底して山形に密着したフリーペーパー

アスク(山形市)

2007年5月25日
農家・蔵元と良質酒米
アスク(山形市)

 告白すると、日本酒党である。山形は全国有数の酒どころと聞いていたので、2年前に山形大学への赴任が決まった時は内心で快哉を叫んだ。そんな酒どころの山形にあって、品質にこだわった酒米を供給している会社があると知り、山形市の「アスク」を訪ねた。

創業は平成七年

 創業者の河合克行社長は山形市内の大手米穀卸商で23年間、酒米一筋に歩んだという経歴の持ち主。そこで培ったノウハウと人脈ネットワークを活かして独立、平成7年(1995年)に米穀卸商「アスク」を立ち上げたという。
 そんな経歴を持つだけに、アスクは年間売上高約30億円のうち50%の15億円までが酒米だ。扱う酒米は全量が兵庫県産「山田錦」、長野県産「美山錦」、北陸産「五百万石」といった吟醸酒用の酒造好適米が占めている。

アスク(山形市)
吟醸酒とは---

 ここで、下戸の読者の方々のために吟醸酒の若干のウンチクを。そもそも吟醸酒とは (1)米、米麹(こうじ)、醸造アルコール、水を原料にした日本酒(2)原料米の精米歩合が60%以下 (3)醸造アルコールの添加量が白米重量の10%以下——といった条件をクリアしなくてはならない。
 つまり、文字通り吟味して醸(かも)した酒なのである。口当たりはもちろん、果物のような香り(吟醸香)が特徴。こだわりの酒だけに生産量は少なく、価格も高め。それだけに小生のような左党にとっては垂涎(すいぜん)の的になっているのです。

全国に販路広げる
 
 アスクの販売先は全国約1500の蔵元の中で吟醸酒を手がける約180の蔵元だ。山形県は吟醸酒の生産量が東北で1位、全国でも4位だが、同社の販路は県内にとどまらず北海道から九州に及ぶ。これらの蔵元が求める酒造好適米を確保するため、栽培指導を含め農家と密接な関係を構築していることが同社の強みになっている。
 全国でも名高い高木酒造(村山市)の吟醸酒「十四代」にも使われている「龍の落とし子」をはじめとして「玉苗(山酒4号)」「羽州誉」「酒未来」など同社が育種開発した酒造好適米は少なくない。

アスク(山形市)

品種改良にも取り組み

 2年前からは酒造好適米の品質向上を目指して「ASK稲作研究会・このゆびとまれ」を組織化し、山形市本沢地区の試験田(写真右)で周辺農家と協力しながら新たな品種改良や種籾(もみ)の育成などに取り組んでいる。
 集荷した酒造好適米は全国の協力工場に精米を委託するスタイルだ。自社の精米工場こそ保有していないが、独自の精米ノウハウを協力工場に提供しており、いわば「アスクブランド」として蔵元に納入している。実際、「アスクの米なら安心」と全幅の信頼を寄せる蔵元が多いと聞く。

ニッチな世界で存在感

 河合社長は「コンマ8の世界」という言葉をよく使うとか。全国で年間850万トンの米生産量の中で酒米は30万トン。このうち酒造好適米は7万トン弱で全体の0.8%に過ぎない。「そんなニッチな世界でキラリと光る企業を目指したい」と河合社長は力説する。
 創業時の酒造好適米の売上高は7億円というから、この11年間で約2倍に伸ばした計算になる。

真摯な姿勢に脱帽

 この間、米余りが進んで酒造好適米の価格も下落していることを考慮に入れると、販売量の伸びは2倍以上になるはずで、ニッチな世界で確実にシェアを拡大しているのがうかがえる。
 割安な焼酎などに押されて日本酒は消費低迷が続いているが、こだわりの農家とこだわりの蔵元をつなぐ存在がアスクだと感じた。いかにも山形らしい真摯(しんし)な企業だ。

■株式会社アスク
・社長 河合克行氏
・所在地 山形市南一番町1−5
・創立 1995年
・資本金 2000万円
・売上高 30億6000万円
・従業員 16人
・事業内容 米穀販売