ドクター松本の医食同源(61)/緊急時の糖尿病治療(中)
2011年4月22日
前回は食事が十分に摂れない非常時のインスリン治療でしたが、今回は2型糖尿病の治療に用いる内服薬の注意点です。
3種類ある内服薬
内服薬には(1)インスリンの分泌を促進する(2)インスリンの作用を改善する(3)食べ物の消化吸収をゆっくりさせる——の3種類があります。血糖値を下げる強さや仕組みは3種3様で、どれを服用しているかで注意点は異なります。

要注意の分泌促進薬
(1)のインスリン分泌促進薬は血糖値が下がりすぎる低血糖を起こす可能性があります。中でも最も強くて長時間作用するSU薬と呼ばれる薬が要注意。食事の摂取量によっては3分の1、2分の1と薬の量を減らす必要があります。いつ食事が摂れるか分からないような非常時には服用の中止も必要になります。
他の薬も減量考慮
(2)のインスリンの作用を改善する薬(ビグアナイド薬やインスリン抵抗性改善薬など)は食べる量が多少減っても低血糖を生じることは稀です。ただ長期間食事ができない状況下で服用し続ければ低血糖になる可能性があり、場合によっては薬の減量や中止が必要です。
ブドウ糖が必要な薬も
(3)の食事の消化吸収をゆっくりさせる薬は血糖値が上がり過ぎないようにする薬なので食事の量が減っても低血糖になる心配はありません。ただインスリン分泌促進薬と併用している場合、低血糖を生じた際にはブドウ糖を飲まなければならなくなります。
日ごろから医師と相談を
大震災などの非常時には低血糖が生じても糖分の確実な補給は望めません。ですから低血糖を生じないように日ごろから薬の効能や緊急時の対処法を主治医と相談しておくことが必要になります。

松本 光生(まつもと・みつお)
1985年山形大学医学部卒業。山形県立中央病院勤務の後、2007年5月に松本内科クリニックを開業。日本糖尿病学会認定糖尿病専門医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医。
1985年山形大学医学部卒業。山形県立中央病院勤務の後、2007年5月に松本内科クリニックを開業。日本糖尿病学会認定糖尿病専門医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医。