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もう怖くない認知症/「感動療法」のススメ(2)

2010年1月8日
 前回は「感動」が認知症の患者さんに良い影響をもたらすというお話でした。今回はある日の「感動療法」のひとコマをのぞいてみましょう。

「感動療法」とは?

 教室には約10人の認知症患者さんがいます。そこに専任の先生がやって来て「みなさん、こんにちは。お元気でしたか?」と優しく笑顔であいさつすると、患者さんの顔がパッと明るくなりました。患者さんたちは本当にこの時間を楽しみにしていたようです。

もう怖くない認知症/「感動療法」のススメ(2)

1枚のプリントから

 先生が1枚のプリントを1人1人に手渡します。そこには原爆が投下された直後の長崎で米国人カメラマンが撮影した写真が映し出されています。原爆で命を奪われた妹を背負って火葬の順番を待っていた少年がカメラを向けられ、思わず直立不動の姿勢をとった瞬間の有名な写真です。

広がる感動や共感

 「この写真は涙も枯れるほどの悲しみに打ちひしがれた顔を撮影したものです」と先生が嗚咽(おえつ)すると、しばしの沈黙の後に1人が涙ながらに満州引き上げの体験を語り始めました。その話を聞いた同年代の他の患者さんも感極まって泣き出し、みるみる涙の輪が広がっていきました。
 
患者さんが生き生きと

 先生は話題を投げかけるだけで、患者さんの反応や共感を呼び起こすだけという役回り。余韻(よいん)を残しながら「今日はここまでにしましょう」と終わりを告げます。
 「今日は本当にありがとう」「次回もよろしく」。先生に声をかけながら患者さんが帰っていきます。「感動」が認知症患者に魔法をかけたような瞬間です。


もう怖くない認知症/「感動療法」のススメ(2)
藤井 昌彦(ふじい・まさひこ)
秋田県能代市生まれ。1983年弘前大学医学部卒業。山形県立河北病院などに勤務後、99年に医療法人東北医療福祉会理事長。日本老年医学会、日本認知症ケア学会に所属。東北大学医学部臨床教授も務める。