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<荒井幸博のシネマつれづれ> 沈まぬ太陽

2009年11月13日
問いかける仕事、家族、人生
<荒井幸博のシネマつれづれ> 沈まぬ太陽

 日本が高度経済成長をたどる昭和30年代。巨大企業・国民航空の労働組合委員長を務める恩地元は従業員の待遇改善が乗客の安全につながるという信念のもと、労組側の要求を会社に認めさせるが、恩地を待っていたのは懲罰人事だった。
 
信念と懲罰人事

 上司からは「労組を脱退すればしかるべきポストを用意する」と諭されるが、恩地の信念は揺らがない。報復から海外の僻地に転々と飛ばされ、家族からは笑顔が消えていく。
 この間、労組副委員長として恩地の同志だった行天は経営陣側に寝返り出世街道を驀進(ばくしん)していた。9年間の海外勤務を終えて帰国した恩地を待っていたのは閑職と、経営陣の走狗となって役員におさまる行天だった。 そんな最中の85年8月、国民航空ジャンボ機が群馬県の御巣鷹山に墜落し、犠牲者520人という航空機史上世界最悪の墜落事故を起こす。恩地は遺族の世話係を命じられ、誠心誠意尽くそうとするのだった——。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 沈まぬ太陽

モデルは明らかに日航

 原作は山崎豊子が1999年に刊行した同名小説。「登場人物、団体は架空のもの」との断りが入るが、日本航空がモデルであることは一目瞭然。日航は現在、再建問題が連日マスコミをにぎわせているが、事態がここに至る淵源(えんげん)を垣間見るようで興味深かった。

高度成長の負の遺産

 同時に、目先の利益優先で突き進んできた日本の高度経済成長とは何だったのかを思わずにはいられない。その象徴の行天を三浦友和が演じる。愚直なまでに信念を貫き通す恩地役は渡辺謙。渡辺なかりせばこの映画は成立しなかったと思わせるほどの熱演だ。
 このところテレビでも「白い巨塔」「女系家族」「華麗なる一族」「不毛地帯」と山崎作品が続いている。城山三郎の「官僚たちの夏」ともあわせ、日本の来し方を見つめ直そうという気運が高まっているようだ。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 沈まぬ太陽
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。