<荒井幸博のシネマつれづれ> 山形スクリーム

題材は山形の落ち武者伝説
床屋を営む三太郎だけは祠を守ろうと必死に抵抗するが、多勢に無勢で祠はあえなく倒されてしまう。果たして三太郎が心配した通り霊が甦(よみがえ)る。
霊は800年前、壇ノ浦の戦いで源氏に破れ、この地に流れ着いた平家の侍頭・葛貫忠経と愛する官女・光笛、4人の部下。村人たちの落ち武者狩りで殺された恨みを晴らすべく、村人を殺害してゾンビとして甦らせ手下にするのだった。絶体絶命のピンチの中、三太郎と女子高生、落ち武者とゾンビの壮絶な闘いが繰り広げられる——。
この作品の竹中直人監督は山形とは何気に縁が深い。山田洋次監督の助監督を長く勤めた天童市出身の花輪金一さんが唯一メガホンを執った「泣き虫チャチャ」で主人公の親友のオカマ役を演じ、「Shall weダンス?」では山形市出身の渡辺えりさんのラテンダンスパートナー役。そして置賜地方で撮影した「スウィングガールズ」では高校生ジャズバンドを指導する教師役。
山形と縁深い竹中監督
すべて脇役ながら作品に絶妙な味付けをしてくれていた。こうしてみると今回の監督作の撮影場所が庄内地方になり、そのタイトルに「山形」が付いたのは必然だったような気がする。
竹中監督が6月26日にキャンペーンのために来形してお会いした時、まずそのお礼を申し上げた。当初は仮のタイトルだったが、庄内や小国で撮影しているうちに山形に魅了され、仮のつもりだった「山形スクリーム」をそのまま使うことにしたそうである。
笑い飛ばせる映画に
竹中監督は俳優としてはシリアスな役もあるが、コメディアンの印象が強い。映画通、とりわけホラー映画通としても知られる。この作品は竹中監督が満を持してメガホンをとったホラーコメディで、チラシにホラー(マイナス20%)、コメディ(120%)とあるように思いっきり笑い飛ばせる映画なのだ。

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。