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もう怖くない認知症/患者の脳と症状の関係(上)

2009年7月10日
 認知症には大別して「中核症状」と呼ばれるものと「周辺症状」と呼ばれるものがあります。「中核症状」は直前のことを忘れる(記憶障害)、季節や時間、場所など自分が置かれている状況が認識できない(見当識障害)といった症状です。「周辺症状」は妄想をきたしたり、突然攻撃的になったりする症状です。
 実際、認知症の患者さんの心理状態はどのようなものなのでしょうか?
ここでみなさんと一緒に想像してみましょう。
もう怖くない認知症/患者の脳と症状の関係(上)
 朝、ふと目が覚めました。確かここはわが家のはずなのに、周りはまるで見たことのない風景です。誰かが声をかけてきますが誰だか分かりません。声色にも聞き覚えがなく、意味も不明です。ただその人が話しかけてくる雰囲気はとても険しく、私のことを責めているようです。何となく危険な空気さえ感じます。
 さて、皆さんならここからどうしますか? 当然この場から逃れようとするでしょう。そしていったいここがどこなのか確かめるため、いろいろと歩き回ってみるでしょう。そうするとさっきの険しい雰囲気の人が追いかけてきて私の腕を捕まえようとします。
 思わずその人の手を振り払おうとして顔に手が当たりました。するとその人は大きな声で何か叫んで私の体の自由を奪おうとします。私は言い知れない恐怖と不安でいっぱいになり、叫びながら引っかき返します。
 
 以上は認知症患者の脳(正確には「大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)」と言います)に対するよくない入力がもたらす症状悪化の典型的なパターンです。見当識障害で不安を感じている認知症患者に対し、身近にいる人の心ない対応がどれだけ患者の不安心理を増幅させるか想像できたでしょうか?
 しかしです。同じ状況でも脳によい刺激を与えれば全く違うストーリーになるのです。そのお話は次回に。

もう怖くない認知症/患者の脳と症状の関係(上)
藤井 昌彦(ふじい・まさひこ)
秋田県能代市生まれ。1983年弘前大学医学部卒業。山形県立河北病院などに勤務後、99年に医療法人東北医療福祉会理事長。日本老年医学会、日本認知症ケア学会に所属。東北大学医学部臨床教授も務める。