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<荒井幸博のシネマつれづれ> 愛を読むひと

2009年6月26日
切なく哀しい「秘密」とは?
<荒井幸博のシネマつれづれ> 愛を読むひと

少年と大人の女性の恋

 1958年のドイツ。15歳のマイケルは21歳年上のハンナと出会い、恋に落ちる。ほどなく2人は男と女の関係になる。
 ハンナは情事の前、マイケルに本の朗読を求める。「ハックルベリー・フィンの冒険」「ドクトル・ジバゴ」「チャタレイ夫人の恋人」…。マイケルは自ら選んだ名作をハンナに朗読して聴かせるのだった。
 この夢のような日々はハンナが理由も告げず姿を消すことによって幕を閉じる。悲しみに打ちひしがれるマイケルだったが、ひと夏の淡い思い出として回顧できるようになった8年後、ハンナは意外な形でマイケルの前に現れる——。
 
過去を持つハンナ

 当初は「おもいでの夏」(1971年)、「青い体験」(1973年)、「マレーナ」(2000年)などと同様、大人の女性を慕う少年の「青い性」を描く作品と思われたが、それは導入部に過ぎない。
 ハンナを演じるケイト・ウィンスレットはなまめかしく美しいが、その表情にはどこかカゲがつきまとう。そのカゲの理由(わけ)は後にナチス戦犯として法廷で裁かれ、ハンナの過去が明らかになるにつれ判明していく。

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戦争犯罪と個人の責任
 
 「あなたなら、どうしましたか?」。裁判官に叫ぶハンナの声が痛々しい。そして自由を犠牲にしてまで守ろうとしたハンナの秘密が切なく、哀しい。戦争犯罪と個人の責任を突きつけられる。
 大切な場面でことごとく腰を引いてしまうマイケルにどうしようもない男の弱さを感じずにはいられない。成長したマイケル役には「シンドラーのリスト」で邪悪な収容所所長を演じたレイフ・ファインズを配したというところにキャスティングの妙を感じる。
 
K・ウィンスレットに喝采
 
 ハンナ役のケイト・ウィンスレットは本作でアカデミー主演女優賞に輝いた。「タイタニック」(1997年)のローズ役は鮮烈な印象を残したが、彼女なくして本作は成り立たなかったほど女優として成長したことに喝采(かっさい)を贈りたい。