徹底して山形に密着したフリーペーパー

<荒井幸博のシネマつれづれ> 余命1ヶ月の花嫁

2009年5月8日
「どう生きたか」がテーマ
<荒井幸博のシネマつれづれ> 余命1ヶ月の花嫁

 今から2年前、東京都内の教会で一組のカップルが結婚式を挙げた。だが花嫁は乳がんの末期患者で、挙式から1カ月後、24年の短い生涯を閉じる。
 
話題の実話、待望の映画化

 この実在の人物、長島千恵さんの闘病生活、恋人である太郎さんの献身愛を追ったドキュメンタリー番組がテレビで何度か放映されたほか、ベストセラー本にもなった。この映画化作品が5月9日公開の「余命一ヶ月の花嫁」である。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 余命1ヶ月の花嫁

廣木監督に聞く

 キャンペーンで山形を訪れた廣木隆一監督に話をうかがった。
 「ドキュメンタリーで描かれ、ストーリーや結末が判っているものをどう映画すればいいか戸惑った」「普通だと原作はあっても現場で膨らませていくんだけど、それをやると嘘っぽくなるし」「主役の2人にはドキュメンタリーから離れて感情のまま演じてもらうことにした」
 
自然な演技の俳優陣

 果たして廣木監督の思惑通り、千恵さんと太郎さんを演じた榮倉奈々、瑛太は素直に瑞々しく演じ、映画の前半と後半では互いを見る表情が確実に変わっていた。がんに妻を奪われ、今また娘をも奪われようとしている父親役の柄本明の抑えた演技が悲しみをいっそう深くする。瑛太と2人でパンダケーキを食べる場面は圧巻。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 余命1ヶ月の花嫁

サイドストーリーも充実

 千恵さんと太郎さんの出会い、きらめくような愛の日々、病気の発覚、ひと時の別れ、再会、結婚、そして死。この2人を取り巻く周囲の人びとのサイドストーリーも描かれ、千恵さんの明るさ、前向きさ、そして太郎さんの優しさが浮き彫りにされてる映画だ。
 「自分のことはどう描かれてもいいという太郎ちゃんの映画への注文は、千恵ちゃんが明るく前向きで気遣いを忘れない女性だったことを正確に描いて欲しいということだった」と廣木監督。自然にちゃん付けで語りながら相好を崩す監督は2人の親戚の伯父さんのようだった。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 余命1ヶ月の花嫁
難病ものにとどまらず
 
 廣木監督はまた「千恵ちゃんががんとどう闘ったかという難病ものではなく、どう生きたかを見て欲しい」と語っていたが、監督の熱いメッセージは映画全編に溢れていた。千恵さんは5月6日に3回忌を迎える。