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<荒井幸博のシネマつれづれ> 旅立ち~足寄より~

2009年4月24日
「旅立ち」ヒットの舞台裏

 1975年、「全国フォーク音楽祭・北海道大会」のステージに真っ赤なニッカボッカ、大きなサングラス、ギター片手といういでたちの若者が登場する。

若き日の松山千春

 この若者こそ無名時代の松山千春。その場違いな格好に会場からは嘲笑と野次が飛ぶが、千春が自作の「旅立ち」を歌い始めると、その歌唱力に会場は水を打ったように静まり返る。だが横柄な態度が審査員の心証を害し予選落ちに。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 旅立ち~足寄より~

千春支えるラジオ局員

 審査員の一人だった札幌のラジオ局ディレクター竹田健二は千春に惚れ込み番組を持たせようと奔走。上司から何度も却下されるが、ついに毎週15分の千春のコーナーを勝ち取る。千春の歌と素朴ながらストレートな語りは若者の間で大人気に。千春に肩入れする竹田には社内で反発もあったが、「旅立ち」は77年1月にレコード化され、大ヒットとなる。
 二人の夢だったコンサートで札幌厚生年金会館を満員にすることも実現し、これから北海道制覇を果たそうと誓い合った矢先、竹田は急性心不全で帰らぬ人となる——。

原作は書き下ろし自伝
 
 この映画の原作は千春が23歳の時に書き下ろした自伝「足寄より」で、竹田と千春との絆(きずな)がテーマ。彼がいなかったら現在の松山千春は存在しなかっただろう。その後、北海道は吉田美和、GLAY、ジュディ&マリー、鈴井貴之、大泉洋らのミュージシャン、タレントを輩出しているが、彼らの活躍も竹田が蒔(ま)いた種といっても過言ではあるまい。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 旅立ち~足寄より~

嬉しい萩原聖人の復活

 この作品で千春を演じた大東俊介は当時の千春を彷彿(ほうふつ)とさせる熱演ぶりだが、特筆すべきは竹田役の萩原聖人。真っ直ぐな熱い男を見事に演じ切り、公開中の「相棒〜鑑識・米沢守の事件簿」での直情怪行型の刑事役、「釣りキチ三平」での行方不明の父親役と同様、存在感を示した。90年代半ばの絶頂期から一時の低迷期を経ての完全復活が嬉しい。