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<荒井幸博のシネマつれづれ> ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~

2009年10月9日
根岸監督(芸工大映像学科長)が快挙
<荒井幸博のシネマつれづれ> ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~

 東北芸術工科大学に今春から設置されている映像学科の学科長を務める根岸吉太郎監督がメガホンをとり、先の第33回モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞に輝いた「ヴィヨンの妻」が10日から公開される。
 
生誕百年の太宰治原作  

 今年は太宰治の生誕百年。複数の太宰作品が映画化されるが、本作もそのひとつ。太宰本人を思わせるデカダン(退廃的)な日々を送る小説家の大谷と、その妻・佐知の物語。
 佐知を演じる松たか子が素晴らしい。冒頭、大金を盗んだ大谷を追いかけて自宅まで押しかけてきた小料理屋夫婦から大谷のこれまでの行状を聞き、平謝りしながらも思わず笑ってしまう佐知。
 自分は献身的に夫に尽くしているというのに、夫たるや酒と女に溺れて借金を繰り返し、長年世話になった小料理屋夫婦のなけ無しの金にも手を付けてしまう。そんな宿六の夫を思うと涙を流しながらも笑うしかない。この佐知の泣き笑いがすべてを物語り、一気に引き込まれていく。

<荒井幸博のシネマつれづれ> ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~

山形ゆかりの出演者たち

 大谷を演じる浅野忠信もいい。妻子を省みず好き放題していながら、決して憎まれることがない男を好演。「剣岳 点の記」で演じた大石田町出身の柴崎芳太郎の愛妻家ぶりとは対照的。浅野がその前に演じた「母べえ」の山崎徹は鶴岡市出身だから、浅野は3作連続で山形ゆかりの作品に出演したことになる。
 ほかにも佐知を慕う若い工員が「天地人」で直江兼続を演じる妻夫木聡だったり、山形が舞台の「おくりびと」に出演した広末涼子が大谷に惹かれ堕ちていく女を演じていたりと、随所に山形が絡んでいるのが嬉しい。米沢出身の眞島秀和も出演しているので注目。

美術や衣装も見事

 また堤真一を筆頭に光石研、山本未来、新井浩文と実力者が脇を固める。バラックなど戦後の混乱期の東京を表した美術や衣装も見事。
 根岸監督は9月28日に山形市内で芸工大の教え子を招き最優秀監督賞で授与された盾を披露して凱旋トークを行った。「手土産を持って故郷に帰ってきた」と嬉しい言葉で口火を切り、学生たちに「チャンスは身近な所にあり、気概を持って映画を学んで欲しい」とエールを送っていた。


<荒井幸博のシネマつれづれ> ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマ・パーソナリティーとして数多くの地元メディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。