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山形新聞社 寒河江社長、会長就任の意向/後任に佐藤専務指名 求心力低下で決断?

2023年4月14日
 山形新聞社の寒河江浩二(ひろじ)社長(75)が6月に社長の座を佐藤秀之専務(63)に譲り、自らは会長に就く意向を固めたことが関係者への取材で分かった。2012年から社長と主筆を兼ねる寒河江氏は同社で絶大な権力を握っているとされるが、直近では紙面づくりなどを巡りたびたび外部からの批判にさらされており、求心力低下が著しいという。
山形新聞社 寒河江社長、会長就任の意向/後任に佐藤専務指名 求心力低下で決断?

 関係者によれば、トップ人事案は4月3日、副部長以上を集めた新年度恒例の社長訓示の最後に寒河江氏が明らかにした。その場では代表権の有無や主筆の職についての言及はなかったが、親しい経営者には2年間は代表取締役会長兼主筆を務める意向を示しているとされる。
 寒河江氏は編集局長、常務、専務を経て社長兼主筆に就任、在任期間は10年超に及ぶ。15年からは山形新聞グループ経営会議議長も務める。
 この間、新聞を取り巻く厳しい環境下で経費削減に努め、全国の地方紙の中でトップクラスの経営基盤を築いたほか、新印刷センターの稼働など次代を見据えた投資にも踏み切っている。
 また県経営者協会の会長や県ゴルフ連盟理事長、県警察官友の会会長などを兼ね、県政財界でも重きをなしてきた。

山形新聞社 寒河江社長、会長就任の意向/後任に佐藤専務指名 求心力低下で決断?

 その一方で、公正中立を旨とするべき言論機関のトップとして、発行部数の減少に歯止めをかけようとする手法や紙面づくりに批判があったことは見逃せない。
 県の助成のもとで同社が16年から推進している「1学級1新聞」は、見方によっては血税を使った山形新聞の拡販事業と指摘されている。
 今年1月には月刊誌ファクタが「みっともない山形新聞ふるさと納税ビジネス」という記事を掲載。ふるさと納税の返礼品に山形新聞の電子版を採用した自治体の記事を大きく取り上げるよう、当時(16年)編集総務だった佐藤専務が担当部署に指示していたことが満天下にさらされた。
 昨年7月から11月にかけては、山形新聞の記事を無断でSNSに載せた市議や県議を実名で報道したことも批判を浴びた。新聞記事には著作権があるが、警察が捜査をしていない段階での実名報道は異例。「実名は控えるべき」という社内の声は封殺されたという。
 複数の同社関係者によれば、寒河江氏はその強権ぶりから陰で「プーチン」と呼ばれ、社内では「物言えば唇寒し」のムードが支配的だったが、昨年から今年にかけ醜聞が続いたことで寒河江氏の求心力は急速に低下しているという。
 寒河江氏もそのあたりの空気は感じ取っている模様。2月には同じ東北で17万部を発行する岩手日報社で17年編集トップを務め、寒河江氏の〝盟友〟とされた東根千万億(あずまね ちまお)氏(70)がクーデター的に社長の座を追われており、社内では「今回の人事案は社内の不満が暴発する前に先手を打ったもの」という見方が強い。