泌尿器講座/腎臓の良性病変
2022年10月28日
今回は腎臓にできる良性病変、具体的には「腎のう胞」「腎血管筋脂肪腫」「オンコサイトーマ」のお話です
腎のう胞
このうち最も頻度が高いのが腎のう胞で、エコー検査やCT検査で判明します。大半は症状もなく無害で、治療の必要はありませんが、稀に悪性腫瘍を伴ったり、のう胞が巨大になって腹痛や腰痛を引き起こすことがあります。
そんな場合、エコーを利用して細い針でのう胞内の液体を吸引し、その後に高濃度のエタノール等を注入する「硬化療法」という治療も選択肢になります。
また腎のう胞で悪性の場合は腎がんに準じて手術を行います。

腎血管筋脂肪腫
腎血管筋脂肪腫は血管、筋肉、脂肪の3組織からなる良性病変です。小さい場合は無症状で経過観察で済みますが、大きくなると腹部の圧迫症状や、腫瘍の血管が破裂して腫瘍の周囲に出血することもあり、治療が必要になってきます。
従来は手術が一般的でしたが、結節性硬化症を伴う腎血管筋脂肪腫に対しては約10年前に「エベロリムス」という治療薬が承認され、手術しなくても腫瘍の拡大を抑制し出血を回避できるようになっています。
オンコサイトーマ
オンコサイトーマは腎臓や唾液腺、甲状腺などに発生する稀な上皮性良性病変です。腎臓のオンコサイトーマは画像診断で腎細胞がんとの区別がなかなか難しく、腎細胞がんを疑って腎部分切除術を行い、病理組織の結果で初めてオンコサイトーマであることが判明することもあります。
専門医を受診しましょう
以上、これら3つの病変は基本的には治療は不要ですが、念のため、検診などで存在を指摘された場合は泌尿器科専門医を受診してエコーやCTなどの画像診断を受けることをお勧めします。


いしい腎泌尿器科クリニック院長 石井 達矢
●(いしい・たつや)1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。同大附属病院、市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士、日本泌尿器科学会認定専門医・指導医、日本医師会認定産業医。
●(いしい・たつや)1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。同大附属病院、市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士、日本泌尿器科学会認定専門医・指導医、日本医師会認定産業医。