泌尿器講座/腎臓の腫瘍(3)
2022年9月23日
腎臓は大別すると、本体である「腎実質」と、腎臓でつくられた尿を集めて尿管を経由して膀胱に送る「腎盂」からできています。
過去2回は腎実質にできる腎細胞がん(腎がん)について解説してきましたが、腎盂にできるがんと、尿管にできるがんは腎がんとは異なり、膀胱がんと同じ「尿路上皮がん」に属します。特に腎盂がんと尿管がんは治療法も同じで、「腎盂・尿管がん」とまとめて扱われます。
過去2回は腎実質にできる腎細胞がん(腎がん)について解説してきましたが、腎盂にできるがんと、尿管にできるがんは腎がんとは異なり、膀胱がんと同じ「尿路上皮がん」に属します。特に腎盂がんと尿管がんは治療法も同じで、「腎盂・尿管がん」とまとめて扱われます。
腎盂・尿管がん
腎盂・尿管がんで最も多い症状は血尿です。尿管結石の症状と同じような腰や背中、脇腹の痛みが生じたり、膀胱近くの尿管がんでは頻尿や排尿時の痛みを伴うこともあります。

転移なければ全摘
転移のない腎盂・尿管がんは、がんのある側の腎臓・尿管・膀胱の一部を摘出する腎尿管全摘術という手術が選択されます。術式は腹腔鏡やロボット支援の腹腔鏡で行うのが一般的です。
手術後は再発する可能性があるため、定期的な経過観察が必要です。膀胱に腫瘍の再発が認められる場合、膀胱がんとして経尿道的膀胱腫瘍切除術を行います。また、定期的なCT検査を行い、再発や転移の有無について経過観察を続けます。
転移あれば化学療法
転移のある腎盂・尿管がんは、膀胱がんと同じシスプラチンを基軸にしたレジメンの化学療法が選択肢です。ただ腎尿管全摘術が行われた場合は腎機能が低下していることが多く、シスプラチンの代替としてカルボプラチンという薬を使用することもあります。
増える選択肢
また化学療法後にがんが進行した場合は、腎がんと同様、尿路上皮がんに対しても化学療法に続いて行う「免疫チェックポイント阻害薬」が承認されており、ステージIVの腎盂尿管がんにも治療の選択肢が増えました。


いしい腎泌尿器科クリニック院長 石井 達矢
●(いしい・たつや)1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。同大附属病院、市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士、日本泌尿器科学会認定専門医・指導医、日本医師会認定産業医。
●(いしい・たつや)1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。同大附属病院、市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士、日本泌尿器科学会認定専門医・指導医、日本医師会認定産業医。