医学のうんちく/ED治療薬と硝酸薬
2022年6月10日
従来、ED治療薬であるバイアグラ、レビトラなどホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬と、狭心症患者に処方されるニトログリセリンなど硝酸薬との同時使用は禁忌とされてきました。
併用は血圧低下の恐れ
PDE5阻害薬には血管拡張作用があり、陰茎海綿体への血液流入を促して勃起を促進させます。硝酸薬には心臓の血管を拡張する作用があり、狭心症の発作時などに使用されています。
両剤を同時に使用すると血管拡張作用が増強し、急激な血圧低下が危惧されていましたが、PDE5阻害薬使用者の1~4%が硝酸薬も使っているのが実情です。

否定する調査結果が
米国の研究チームは昨年、2012~16年の患者データを用いて調査したところ、PDE5阻害薬は約16万人、硝酸薬は約48万人に処方され、約3000人に両剤が同時処方されていましたが、心血管障害発生率に差は認められませんでした。
今年になってデンマークの研究チームも同様の調査を行っており、硝酸薬を処方されている患者におけるPDE5阻害薬の処方率は00年に0.9%でしたが、18年には19.5%に増加していました。それでも同時使用と心血管障害発生率との間に有意な関連は認められませんでした。
同時に使用しなければ
両剤を同時に処方されていても、同時に服用しなければ血中濃度が同時に上昇することはなく、相互作用が起こりにくい可能性があります。両剤の作用のピークが重ならないようにすることが重要と考えられます。
ただPDE5阻害薬のうち作用時間が24時間以上のシアリスには注意が必要です。同剤を服用後、時間を経てから胸痛発作が起きて硝酸薬を使用した場合、血圧低下のリスクが高くなります。
日本では推奨されず
なお日本では同時使用は推奨されていないことに御留意下さい。


山形徳洲会病院院長
笹川 五十次
●(ささがわ・いそじ)1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。
笹川 五十次
●(ささがわ・いそじ)1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。