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<荒井幸博のシネマつれづれ>半世界

2019年2月8日
中年男3人の葛藤と希望

 元SMAPの稲垣吾郎が炭焼き職人という土臭い男に扮し、かつての同級生を実力派の長谷川博己と渋川清彦が演じる。メガホンを取ったのは骨太な作品作りで定評のある阪本順治監督、しかも本作は阪本監督のオリジナルストーリー。

<荒井幸博のシネマつれづれ>半世界

 高村紘(稲垣)は父から受け継いだ山中の炭焼き窯で備長炭の職人として生計を立てていた。中学時代の親友で、自衛隊員として海外派遣されていた沖山瑛介(長谷川)が突然故郷に帰ってきた。もう1人の同級生・岩井光彦(渋川)を誘い、久しぶりに3人で酒を酌み交わす。
 瑛介は海外で何か心に深い傷を負い、それが原因で妻子と別れたようだったが、多くを語らない。紘自身は深い考えもなく単に父親の仕事を継ぎ、ただ漫然とやり過ごしてきただけだったが、瑛介に「こんなこと、1人でやってきたのか」と過酷な仕事を驚かれる。
 光彦からは「お前、明に関心持ってないだろう。それがあいつにもバレてんだよ」と妻(池脇千鶴)に任せきりの息子・明(杉田雷麟)への無関心を指摘されてしまう。
 過去から抜け出せずにいる瑛介に半ば強制的に炭焼きの仕事を手伝わせ、やがて瑛介が抱える過去の痛みを知った紘は、家族、そして仕事と真剣に向き合う決意をするのだったが――。

 稲垣、長谷川、渋川という個性の異なる役者のアンサンブルが素晴らしい。池脇も夫を支える妻というよりたくましい女房ぶりを力演している。これらは阪本監督の剛腕のなせる業か。
 他に石橋蓮司、小野武彦、堀部圭亮、竹内都子らが脇を固める。第31回東京国際映画祭2018コンペティション部門で観客賞を受賞した作品。

 39歳。人生の半ばを迎えた男3人が今後の人生をどう生きるかを見つめ直すヒューマンドラマ。この友情が微笑ましくも羨ましい。その年齢はとうに過ぎたが、旧友と久しぶりに酒を酌み交わし、来し方行く末を語り合いたくなった。


<荒井幸博のシネマつれづれ>半世界
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜15時)を担当。