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<荒井幸博のシネマつれづれ>こんな夜更けにバナナかよ

2018年12月28日
笑いと涙の実話

 筋ジストロフィーという難病を抱えながらも自立した生き方を貫いた実在の人物を描いた渡辺一史の著書の映画化。

<荒井幸博のシネマつれづれ>こんな夜更けにバナナかよ

 12歳の時に筋力が徐々に衰えていく筋ジストロフィーにかかった鹿野靖明(大泉洋)。一生を施設や病院で終える筋ジス患者が多いなか、鹿野は主治医の反対を押し切り、札幌市内の団地の一室をケア付き住宅にして自ら集めたボランティアに囲まれながら自立して暮らしていた。
 手足を動かせない、寝返りも打てない、痰は吸引してもらわねばならない。鹿野は24時間ボランティアの介助なしには生きていけないのだった。

 だからと言って卑屈になったり遠慮するわけではなく、夜中に突然「バナナが食べたい!」と言って買いに行かせるなど、いつも王様のようなワガママぶりで周囲を振り回していた。
 ボランティアのひとり医学生・田中(三浦春馬)も鹿野のワガママぶりに右往左往するばかり。鹿野に振り回されて彼女の美咲(高畑充希)とのデートもままならず、不満を募らせた美咲までボランティアに加わる羽目に。
 その美咲に鹿野が恋心を抱いてしまったから話がややこしくなる。

 メガホンをとったのは「ブタがいた教室」の前田哲監督。前田監督は言う。
 「鹿野さんは一見ワガママに見えるけど、ただ心に思ったことをストレートに表現しているだけ。彼を取り巻くボランティアも魅力的で、まるで家族のよう。『これは〝寅さん〟だ!』と思いました」
 「政治家らが『自己責任』『生産性』などと不寛容なことを口にする時代、鹿野さんとボランティアがともに生きた姿を知って欲しい」

 2009年から8年間 、東北芸術工科大学映像学科の准教授を務めた前田監督は最後に「本作のコピーは『あなたと過ごした日々は宝物でした』ですが、私にとっても山形で過ごした8年間は宝物 。ずっと大切にしたい」と語ってくれた。


<荒井幸博のシネマつれづれ>こんな夜更けにバナナかよ
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜15時)を担当。