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<荒井幸博のシネマつれづれ>母さんがどんなに僕を嫌いでも

2018年11月23日
母さんがどんなに僕を嫌いでも

 漫画家の歌川たいじが自身の壮絶な母子関係をつづった同名コミックエッセイの映画版。

<荒井幸博のシネマつれづれ>母さんがどんなに僕を嫌いでも

 タイジ(太賀)の母(吉田羊)は美人で話し上手、いつも近所の主婦の輪の中心にいる。タイジはそんな母が大好きだが、情緒不安定な母は肥満児のタイジを「お前はブタだ」とののしり、殴る蹴るの虐待を続けていた。耐えかねたタイジは17歳で家を飛び出し、1人で生きていこうと決める。
 社会人になっても他人に心を開くことができないタイジだったが、意を決して足を踏み入れたアマチュア劇団で生まれて初めて心を許せる友となるキミツ(森崎ウィン)と出会い、キミツの言葉に突き動かされ、母と向き合う覚悟をするのだった――。

 幼いころからタイジを可愛がり、血のつながりはないがタイジが「婆ちゃん」と慕っていた病床の女性(木野花)との十数年ぶりの再会シーンが印象的。「婆ちゃんはタイちゃんに本当に笑って欲しいの。友達をたくさん作って欲しいの。だからボクはブタなんかじゃないと言って」とふり絞るように言われた時の太賀の表情の変化に心が大きく揺さぶられる。
 これも吉田演じる母親の壮絶なヒール(悪役)ぶりや、タイジの子ども時代を演じた小山春朋の好演がいきている。
 「原作者の歌川さんが感じてきた喜びも悲しみも全部すくい上げたいという気概で臨みました」という太賀さん。放送中のテレビドラマ「今日から俺は‼」で演じている単細胞で猪突猛進の今井役とはかけ離れた役づくりで、その振り幅の大きさに感服する。「いい俳優だなあ」と10年前から注目していたが、間違ってなかったことを確信した。

 全国で11月16日から公開が始まっているが、残念ながら県内での公開は未定。見る人に「君は決して独りじゃないんだよ!」とそっと背中を押してくれる作品で、県内でも早期の上映を願いたい。


<荒井幸博のシネマつれづれ>母さんがどんなに僕を嫌いでも
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜15時)を担当。