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医学のうんちく/キスペプチン

2018年11月23日
 今回は哺乳類の生殖に関係するホルモン「キスペプチン」のお話です。

1996年に発見

 1996年、米ペンシルベニア州立大学の研究チームはがんの転移を抑制するKiss1遺伝子を発見しました。2001年に武田薬品工業は同じ遺伝子産物を人間の胎盤から発見し、同遺伝子産物は後にキスペプチンと命名されました。
 03年、大人になっても性成熟が起こらない場合にキスペプチン受容体に突然変異があることが報告され、それ以後、キスペプチンが哺乳類の生殖機能制御で中心的な役割を持っていることが明らかになってきました。

医学のうんちく/キスペプチン

若い男性に投与すると

 英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは17年、平均年齢25歳の健康な男性29人を対象に、キスペプチンか偽薬のいずれかを注射し、様々な画像を見せた時の脳機能の変化を機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を使って解析、同時に心理統計テストも行いました。

性的画像に脳が反応

 その結果、キスペプチンを注射された場合のみ、性的な画像やロマンチックな画像を見せた時に性的興奮や恋愛により活性化する脳領域の活動量が増大することが明らかになりました。さらに、ネガティブな感情や思考が減少、抑制される傾向にありました。
 同チームは08年、キスペプチンがぼんやりと安静状態にある脳において働く領域(デフォルト・モード・ネットワーク)にも影響を与え、性的嫌悪感の減少やネガティブな気分を抑制することを明らかにしました。

不妊治療への道開く?

 同チームによれば、性的興奮をつかさどるキスペプチンは新たな不妊治療の開発や心理的性機能障害の治療に道を開くばかりでなく、うつ病などの治療にも利用できる可能性があるとしています。


医学のうんちく/キスペプチン
医学のうんちく/Y染色体のお話(中)
山形徳洲会病院長
笹川 五十次 (ささがわ・いそじ)
プロフィール
1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。