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<荒井幸博のシネマつれづれ>ビブリア古書堂の事件手帖

2018年10月26日
古書に隠された真実

 幼いころのある出来事をきっかけに本が読めなくなった五浦大輔は、祖母の遺品から夏目漱石の直筆と思われる署名が入った「それから」を見つけ、その真贋(しんがん)を鑑定してもらうため鎌倉の片隅にある古書店「ビブリア古書堂」を訪れる。

<荒井幸博のシネマつれづれ>ビブリア古書堂の事件手帖

 店主である若く美しい篠川栞子(しおりこ)は極度の人見知りながら、本に関しての情熱と知識は並外れで、さらには優れた洞察力と推理力の持ち主だった。栞子はたちどころに祖母が死ぬまで隠し通してきた秘密を解き明かす。
 それが縁となって古書堂で働き始めた大輔に、栞子は太宰治の「晩年」の希少本を巡って謎の人物から脅迫されていることを打ち明ける。
 やがて2人は、漱石と太宰の2冊の本に隠された秘密を発見、それが大輔の人生を変えるひとつの真実につながっている事を知るのだった――。

 原作は文芸ファンとミステリー愛好家の双方から支持を受ける三上延の同名ベストセラー小説。  先日、この映画のメガホンをとり、自身も本との出会いから大きな影響を受けてきたという三島有紀子監督に話を伺う。
 「古い本を手にした時、著者、手にした人、贈った人など多くの人々の想いが積み重なっているように感じます」
 「つまりビブリア古書堂は過去と現在を結ぶ場所で、栞子は本を通して人の想いをつないでくれる人。それを大切に描きたいと思いました」
 ちなみに三島監督のご尊父は三島由紀夫の大ファンだったとか。そのため「由紀子」と名付けられるところを、ご母堂の大反対で「有紀子」になったそうです。

 ヒロイン栞子に監督が「この人しかいない」と思った黒木華、大輔には野村周平を配した。このほか成田凌、夏帆、東出昌大と、いま輝いている俳優たちが適材適所に。
 主題歌はサザンオールスターズの「北鎌倉の思い出」。三島監督たっての願いに応えた桑田佳祐の書き下ろしであることを付記しておく。


<荒井幸博のシネマつれづれ>ビブリア古書堂の事件手帖
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。