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<荒井幸博のシネマつれづれ>樹木希林さんを惜しむ

2018年9月28日
印象強烈な「悠木千帆」

 樹木希林さんが亡くなった。希林さんは「わが母の記」で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得し、2013年3月に行われた授賞式のスピーチで全身ガンに侵されていることを公表していたが、それ以降も精力的に映画出演を続けていた。

<荒井幸博のシネマつれづれ>樹木希林さんを惜しむ

 今年だけでも、カンヌ国際映画祭でパルムドール賞を受賞した「万引き家族」、文学座の先輩・山﨑努さんとともに「モリのいる場所」に出演。後者の演技では北米最大の日本映画祭「ジャパン・カッツ」で国際的に活躍している日本人俳優に与えられるCUT・ABOVE賞を受賞している。
 また来月公開の「日日是好日」では、ヒロインに茶道を指導する師匠役で登場、「私のような至らない者に長い間ついてきてくださいまして本当にありがとうございます。心より感謝しております」「毎年毎年同じことの繰り返しですが、こうして同じことを繰り返せることが幸せなんだなぁと…」というセリフを口にしているが、今にして思えば、このセリフは希林さんの想いそのものだったのではないか。

 そして来年は遺作となる「エリカ38」が控える。 この映画は友人の浅田美代子さんのために希林さんが企画、資金集めにも奔走した作品。
 7月19日に初号試写があり、その際、浅田さんに3時間近くダメ出しやアドバイスをしたという。これらのことも希林さんが死期を悟っていたことをうかがわせる。 

 長く脇役人生を歩み、還暦を過ぎたあたりから主演が多くなって名優の名を欲しいままにした希林さんだが、個人的には悠木千帆時代のテレビシリーズ「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」の印象が強烈だ。特に後者では31歳で老婆を演じ、沢田研二のポスターに向かって「ジュリイィィー!」と叫ぶ希林さんが大好きだった。
 何者にも媚びへつらうことなく、何事にもブレない言動も楽しみだったが、あの演技が観れないことが何より寂しい。


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荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。