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医学のうんちく/男と女の違い~脳の性分化決定遺伝子~番外

2018年8月10日
 哺乳類の脳は、男性ホルモンの刺激を受けると男性化し、刺激を受けないと女性化します。男性ホルモンの働きによって性分化が起こる時期を「臨界期」と呼びます。

Ptfla遺伝子

 臨界期はマウスでは出生直前~出生後1週間、人間では妊娠12~22週ごろとされています。 臨界期以前の脳の性分化は未知の領域でしたが、今年7月、国立精神・神経医療研究センター、筑波大学などの研究チームは、小脳や膵臓の形成に必要なことで知られる「Ptfla遺伝子」が脳の性分化に関わることを明らかにしました。

医学のうんちく/男と女の違い~脳の性分化決定遺伝子~番外

遺伝子を破壊した雄は?

 同チームの研究によれば、Ptfla遺伝子は臨界期よりかなり前の発達段階で視床下部に発現します。発現は胎生10日に始まり、臨界期前の胎生16日にはほとんど失われます。
 Ptfla遺伝子を破壊した雄のマウスは、正常な雄が通常行う雌のお尻の上に乗りかかる性行動を起こさず、同性に対する攻撃性も見せないほか、雌に対して攻撃性を見せました。さらに臨界期に男性ホルモンの刺激を受けても脳の男性化は起きませんでした。

遺伝子を破壊した雌は?

 一方、Ptfla遺伝子を破壊した雌のマウスは、正常な雌が通常行う雄に対してお尻を突き出す性行動を起こす頻度が極端に低下し、子集めや毛繕いなどの基本的な子育て行動もほとんど見られませんでした。
 臨界期に男性ホルモンの刺激を受けていないにもかかわらず、脳の女性化が起きませんでした。

性分化は臨界期以前に

 これらのことから、臨界期までに脳が性分化準備状態になっていないと、臨界期を迎えて男性ホルモンの刺激や非刺激により無条件に男性脳や女性脳へと性分化できるわけではないことが明らかになりました。


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山形徳洲会病院長
笹川 五十次 (ささがわ・いそじ)
プロフィール
1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。