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<荒井幸博のシネマつれづれ> モリのいる場所

2018年5月25日
樹木希林がいる至福

 西城秀樹さんが63歳の若さで逝った。1974年放送の人気テレビドラマ「寺内貫太郎一家」で共演して以来、西城さんと親交があったのが樹木希林さん。「人の死には思い入れはないんですけど、秀樹君の訃報はこたえました」と悼む。

<荒井幸博のシネマつれづれ> モリのいる場所

 樹木さんは5年前に全身がんであることを公表したが、75歳の今も精力的に仕事に励んでいる。
 19日公開の「モリのいる場所」では81歳の山﨑努さんとダブル主演。97歳で亡くなるまでの30年間、ほとんど敷地の外に出ることなく庭の生命を描き続けた伝説の画家・熊谷守一を山﨑さん、熊谷の18歳年下の妻・秀子を樹木さんが演じる。
 モリ(守一)の創作活動と、それを支える秀子の姿を軸に、連日家に集う人々とのエピソードを、昭和49年、モリ94歳のある1日をフィクションとして淡々とユーモラスに描いた作品だ。

 文学座の先輩、後輩に当たり、55年来の付き合いという山﨑さんと樹木さんは意外なことに初共演。樹木さんは「俳優として別の場所で生きてきて、山﨑さんと初めてご一緒できたのは嬉しかった。いい時間を過ごせました」と語っている。
 この名優2人と池谷のぶえ、加瀬亮、光石研、三上博史、きたろう、吹越満、青木崇高ら個性豊かな役者のアンサンブルが素晴らしい。文科省からの文化勲章授与打診の電話に夫婦でいともたやすく断る場面があるが、金や名誉、時間に縛られない夫婦の生き方は「人としての本来のあり方では」と思わせられる。「こういう映画は作っておいた方がいいかなと思った」と樹木さん。

 樹木さん出演作は、この後も第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを獲得した是枝裕和監督の「万引き家族」が6月8日、大森立嗣監督の「日々是好日」が秋に公開を控えている。
 病気や老いに寄り添いながら仕事を続ける樹木希林という女優を同時代に観られる至福をかみしめなければならないのかもしれない。


<荒井幸博のシネマつれづれ> モリのいる場所
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。