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<荒井幸博のシネマつれづれ> 孤狼の血

2018年5月11日
現代版「仁義なき戦い」

 山形市在住の作家、柚月裕子さんのベストセラー小説「孤狼の血」を白石和彌監督が映画化!同小説は2015年度、直木賞候補や吉川英治文学新人賞候補になり、日本推理作家協会賞を受賞している。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 孤狼の血

 昭和63年、架空の広島県呉原市が舞台。暴力団系列の金融会社社員の失踪事件をきっかけに、暴力団同士の激しい権力闘争が勃発。所轄署に配属になった新米刑事・日岡(松坂桃李)は班長の大上(役所広司)の下について捜査を担当する。
 大上は敏腕刑事だが、捜査のためには手段を選ばず違法行為すら厭わない。ヤクザとの癒着すら疑われている。そんな大上に必死にくらいつくが、捜査は警察と仁義なきヤクザの壮絶な抗争の渦に巻き込まれていく。

 日本を代表する俳優の役所は、これまで山形市出身の後藤ひろひと原作「パコと魔法の絵本」、南陽市出身の深町秋生原作「渇き。」で主演、そして本作。山形との縁が途切れないのが嬉しい。松坂は大上に幻滅、軽蔑、反撥しながらも惹かれていく日岡を見事に演じている。
 このほか、江口洋介、竹野内豊、石橋蓮司、真木よう子、ピエール瀧、中村獅童、滝藤賢一、駿河太郎、伊吹吾郎、嶋田久作、田口トモロヲ、中村倫也らが存在感を発揮している。
 これらの個性豊かな俳優を演出した白石監督はこのところ「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」「彼女がその名を知らない鳥たち」で評価がうなぎのぼり。深作欣二監督「仁義なき戦い」シリーズなどの活気が甦ったかのような東映ならではの作品。

 柚月さんは「『孤狼の血』を書いたきっかけは『仁義なき戦い』にある」と語っているが、まさに「仁義なき戦い」をスクリーンで観た時の高揚感を覚えるとともに、ヤクザの凌ぎや暴力などの目をそむけたくなる場面には気圧されながらも、驚愕の結末に魂を大きく揺さぶられた。
 柚月裕子 恐るべし!


<荒井幸博のシネマつれづれ> 孤狼の血
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。