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<荒井幸博のシネマつれづれ> おだやかな革命

2018年4月13日
「豊かさ」の意味を問う

 鶴岡市在住の渡辺智史監督の新作「おだやかな革命」が4月7日からフォーラム山形で公開されている。「3・11」後、自然エネルギーを活用し、地域再生に取り組む日本各地の人々の取り組みを描いたドキュメンタリー映画だ。

<荒井幸博のシネマつれづれ> おだやかな革命

 登場するのは、太陽光による電力会社を立ち上げた福島県喜多方市の造り酒屋当主や飯館村の元畜産農家、農業用水路を利用して自力で小水力発電事業に乗り出した岐阜県郡上市石徹白の住民ら。秋田県にかほ市の風車を利用した電力、山形県遊佐町での太陽光発電への取り組みなども紹介している。
 エネルギー自治を目指す地域住民の姿を温かなまなざしで見つめる。石徹白の初老の女性が「ここに嫁いでからというもの、雪深く、不便で何もいいところがないと不満だったけど、実はこんなに美しく豊かな土地だったと気づかされた」と語っていたのが強く印象に残る。

 単に地方の自然エネルギーへの取り組みを描いたのではなく、そこから経済成長優先社会の中で見失われた「豊かさ」とは何かを問いかける。先人たちの知恵や努力が生み出した地域文化の素晴らしさを浮き彫りにしていく。ナレーションは女優の鶴田真由が担当。
 渡辺監督は2011年公開の前作「よみがえりのレシピ」で、山形県内各地に伝わる在来作物の種を受け継ぎ、次代に伝えようとする人々の姿を追いかけたが、先人たちが作り出した貴重なものの価値を認め、次世代につなげようとする人々の姿を描いている点では本作も通底している。

 東京の映画館ポレポレ東中野で2月3日から上映が始まり、話題が口コミで広がってロングラン上映となってGWまでの上映が決定した。
 タイトルの〝おだやか〟と〝革命〟は相反するイメージの言葉だが、鑑賞後はきっと腑に落ちるはず。「おだやかな革命」の輪が山形から全国、そして世界中に拡がることを願ってやまない。


<荒井幸博のシネマつれづれ> おだやかな革命
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜15時)を担当。