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特別寄稿:大杉漣さん訃報への見所

2018年3月9日
 大杉漣さんの訃報に驚き、悲しんだ一人です。医師として所見の一端を述べさせていただくと…。

 まず死因として発表されている「急性心不全」というのは、何らからの理由で心臓が動かなくなった状態を指し、診断名ではありません。つまり心臓が動かなくなった疾病があるはずなのです。
 一般的に可能性が最も高いのは「心筋梗塞(しんきんこうそく)」です。心筋梗塞は、過去に心電図などで異常がなかった人にも急に起こることがあります。
 大杉さんの場合、亡くなる直前に激しい腹痛に襲われたそうですが、多くは心臓をつかまれるような激しい痛みが現れます。ただ、時にみぞおちや肩、耳の痛みだったりもします。
 私自身も30年前に、耳が痛いと訴えて来院された患者さんの心筋梗塞を見逃してしまった痛恨事があります。

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 急性心不全のもう一つの可能性は「大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)」。特に「解離性(かいりせい)大動脈瘤」は血管の中で壁が裂けてしまい、激しい痛みを伴うだけでなく、心臓のまわりの血管や脳に向かう頸動脈(けいどうみゃく)などを瞬時に詰まらせてしまいます。
 心筋梗塞、大動脈瘤とも危険因子は喫煙で、大杉さんもかつては1日80本のたばこを吸われていたとか。また過度のアルコールと脂肪の摂取も危険です。

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 突然の訃報に接するたびに「何か予兆はなかったのか」ということが取り沙汰されますが、これもなかなか難しいところです。当院のような一般内科医に心臓を心配されて来られる方にはほとんど異常がありません。
 ただ心筋梗塞や大動脈瘤になった患者さんに聞くと、やはり以前から胸の圧迫感などがあった方が多いようです。
 体調に異常を感じたら一度は医師に相談し、必要なら専門的な検査も受けましょう。


やまコミ「健康コラム」でおなじみの
きくち内科医院院長
菊地 義文