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<荒井幸博のシネマつれづれ> ルージュの手紙

2018年2月9日
好対照の母娘が最後に

 パリ郊外で助産婦として働くクレール(カトリーヌ・フロ)は、女手ひとつで息子を大学生まで育てあげてきたことが誇り。そんなある日、1本の電話が入る。相手は30年前、最愛の父の前から突如姿を消した義理の母ベアトリス(カトリーヌ・ドヌーヴ)だった。

<荒井幸博のシネマつれづれ> ルージュの手紙

 「父に会いたい」というベアトリスにクレールは戸惑う。父はベアトリスの失踪に耐えられず自殺していたからだ。クレールは30年ぶりに会うベアトリスが許せない。
 豹柄のスカーフを巻き、派手なドレスにアクセサリーをジャラジャラ身につけているベアトリス。一方のクレールはファッションには無頓着。髪はひっつめで、いつもベージュのコートに身を包み、靴はローヒール。
 これまで実直に赤ん坊を取り上げ、ひたすら他人のために働き続けてきたクレールと、父と自分を捨て、酒やギャンブル、男に人生を費やし、奔放に生きてきたベアトリスは水と油だった。

 だがクレールは不自由な暮らしぶりのベアトリスを放っておけない。持ち前の親切心から自分の家に住まわせ、食事の世話までするのだった。
 身勝手でトラブルメーカーのベアトリスに呆れながらも、お洒落などに関心のなかったクレールが少しづつ感化されていく様子が微笑ましい。
 ベアトリスもまたクレールの堅実で真面目な生き方に影響され、心の扉を少しずつ開いていく。そしてベアトリスのある秘密が明るみになったことで、2人の間の失われた年月は急速に埋まっていくのだった――。

 血はつながっていなくともやはり母と娘。ドヌーヴ(74歳)とフロ(61歳)というフランスの2大女優がぶつかり、共鳴し合うことでより大きな感動を呼び起こす。この2人と脚本・演出のマルタン・プロヴォ監督に拍手を贈りたい。
 浅丘ルリ子と風吹ジュン、吉永小百合と吉田羊の組み合わせで、こんな映画を日本で撮れないものだろうか?
 2月24日から上映。


<荒井幸博のシネマつれづれ> ルージュの手紙
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜15時)を担当。